けと土(けとつち)

けと土とは

けと土(ケト土、けとつち)とは、
湿地や沼地などでヨシ、マコモなどの植物遺体が長期間堆積・分解してできた、
黒色で有機物を多く含む泥炭質の園芸用土です。

水を含むと強い粘りがあり、
形をつくったり、石や植物の根に密着させたりしやすいことから、
苔玉、石付き盆栽、山野草の寄せ植えなどで利用されます。

一般的な鉢植え用の用土とは性質が大きく異なり、
主な目的は「養分を供給すること」ではなく、
保水性と粘着性・成形性を利用して植物や用土を保持することです。

けと土は「湿地の土」そのものではない

けと土は湿地に由来しますが、
湿地や沼地から採取した土をすべて「けと土」と呼ぶわけではありません。

園芸で流通するけと土は、
ヨシ、マコモなどの湿地植物の遺体が長期間にわたって堆積し、
分解・泥炭化した有機質の多い黒色の土状資材です。

したがって、
「湿地土」をけと土の同意語として扱うのは適切ではありません。

また、天然由来の資材であるため、
産地や製品によって植物繊維の残り方、粘り、含水状態などに差があります。

けと土の特徴

強い粘着性がある

けと土の大きな特徴は、
水分を含んだ状態で粘りが強く、
手で練って形をつくれることです。

この性質を利用して、
苔玉を球状に成形したり、
石付き盆栽で根や用土を石へ固定したりします。

一般的な鉢植え用土では得にくい、
「貼る・包む・丸める・固定する」ための物理的性質が
けと土の大きな特徴です。

保水性が高い

有機質や細かな粒子を多く含み、
水分を保持しやすい性質があります。

苔玉などの限られた用土量で
根の周囲の水分を保持するために利用されます。

ただし、
保水性が高いことと、根にとって常に良好な環境であることは同じではありません。

水分が多すぎて気相が不足すれば、
根への酸素供給が低下する可能性があります。

通気性・排水性を目的とする資材ではない

けと土は細かく粘着性が強いため、
赤玉土のような粒状用土とは
物理性が大きく異なります。

けと土だけを厚く使用すると、
根域の通気性や排水性を確保しにくくなる場合があります。

このため、
苔玉などでは赤玉土や砂類などと混合して使用する方法があります。

けと土の主な用途

苔玉

けと土の代表的な用途です。

粘着性を利用して植物の根の周囲を用土で包み、
球状に成形して、その表面を苔で覆います。

農林水産省が紹介している苔玉づくりでは、

  • 赤玉土
  • 富士砂
  • ケト土

を1:1:1で混合する例が示されています。

少しずつ水を加えながら練り、
植物の根を包める程度の硬さに調整します。

ただし、
この配合比は苔玉を作る一例であり、
すべての植物や製品に共通する絶対的な配合比ではありません。

植物の水分要求量、
けと土自体の粘りや含水量、
使用する他の用土によって調整します。

石付き盆栽

石付き盆栽では、
根や植え込み用土を石の表面に保持するために利用されます。

けと土の粘着性を利用して
石のくぼみや根の周囲へ貼り付け、
用土が流出しにくい形に整えます。

赤玉土の細粒や水苔などを混合して
使用される場合もあります。

山野草・草もの盆栽

山野草の寄せ植えや草もの盆栽などで、
用土を成形・保持するために利用されることがあります。

ただし、
植物を長期間栽培する根域全体を
けと土だけで構成することが適しているとは限りません。

植物ごとに必要な排水性と通気性を考え、
他の用土との組み合わせを決めます。

けと土とピートモスの違い

けと土とピートモスは、
いずれも湿地に堆積した植物遺体に由来する有機質資材ですが、
園芸での形状と使い方は大きく異なります。

項目 けと土 ピートモス
由来 湿地植物などが堆積・分解した泥炭質資材 湿地植物が堆積してできた泥炭を加工した資材
一般的な状態 黒色で湿り、粘着性が強い 乾燥・粉砕され、繊維質で軽いものが多い
主な用途 苔玉、石付き盆栽などの成形・固定 培養土原料、保水性・物理性の調整など

けと土とピートモスを完全な同一資材として扱うのは適切ではありません。

原料となる植物や腐植化の程度、
加工方法、含水状態、粒子・繊維構造、
園芸で求められる機能が異なります。

「有機質が多い=肥料分が多い」ではない

けと土には植物由来の有機物が多く含まれます。

しかし、

有機物を多く含むことと、植物が利用できる養分を多く含むことは別です。

窒素、リン酸、カリなどの肥料成分が
植物に必要な量だけ供給されることを意味しません。

けと土を使用したからといって、
通常の施肥管理が不要になるわけではありません。

栽培する植物と用土量に応じて
施肥を別に判断します。

けと土を単用するときの注意

けと土は粘着性と保水性が非常に高いため、
一般的な鉢植え用土と同じ感覚で大量に使用すると、
根域の空気が不足する場合があります。

特に、

  • 乾燥を好む植物
  • 過湿に弱い植物
  • 根域が大きい植物
  • 長期間植え替えない栽培

では、
けと土だけで根域を構成する方法が適しているとは限りません。

「保水性が高い=良い用土」と判断しないでください。

根には水だけでなく酸素も必要です。

乾燥にも注意する

けと土は湿った状態では練りやすい一方、
強く乾燥すると硬く固まり、
再び均一に吸水させにくくなる場合があります。

保存するときは、
製品の状態とメーカーの指示を確認し、
過度に乾燥させないよう管理します。

苔玉でも、
表面の苔だけを見て水分状態を判断すると
内部の根鉢が乾燥している場合があります。

逆に、
常に水を含ませ続ければよいわけでもありません。

使用する植物の性質に合わせて
水分管理を行います。

けと土の「黒・青・赤」という分類について

園芸用のけと土について、
「黒けと土」「青けと土」「赤けと土」を標準的な3種類として分類する根拠は確認できません。

市販品では産地や状態、
製造・販売事業者による商品名などが付けられる場合がありますが、
それを一般的なけと土の分類として扱うべきではありません。

色だけを基準として、

  • 栄養分が多い
  • 排水性が高い
  • 保水性と排水性のバランスがよい

などと判断することもできません。

けと土を選ぶ場合は、
色による分類ではなく、
粘着性、繊維の状態、含水状態、用途、他の用土との配合を確認します。

けと土でよくある誤解

  • 「湿地の土ならすべてけと土」:誤りです。園芸でいうけと土は、湿地植物由来の有機物が長期間堆積・分解して形成された泥炭質の用土を指します。
  • 「有機質が多いので肥沃」:有機物含量と植物が利用できる肥料成分量は同じではありません。
  • 「保水性が高いので根に理想的」:水分過多で気相が不足すれば、根の生育には不利になります。
  • 「単用すればよい」:苔玉や石付き盆栽では、赤玉土や砂類、水苔などと組み合わせる方法があります。
  • 「ピートモスと同じもの」:由来に共通点はありますが、形状、加工状態、物理性、園芸上の用途が異なります。

関連する資材分類・農業用語

参考動画

初めてでも簡単!苔玉を作ろう!!(福井県 園芸LABOの丘)

福井県の園芸体験施設「園芸LABOの丘」が公開している苔玉づくりの動画です。けと土が利用される代表的な用途である苔玉の形づくりや植え付け方法を確認する参考になります。

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