く溶性りん酸(くようせいりんさん)

く溶性りん酸とは

く溶性りん酸(くようせいりんさん)とは、
肥料に含まれるりん酸成分のうち、
規定されたクエン酸溶液に溶けるりん酸を表す肥料成分の区分です。

「く溶性」の「く」はクエン酸の「ク」に由来します。

農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の肥料等試験法では、
く溶性りん酸は2%クエン酸溶液を用いて抽出し、分析します。

「く溶性=水に溶けやすい」という意味ではありません。

水に溶けるりん酸は「水溶性りん酸」と呼ばれ、
く溶性りん酸とは区別して表示・分析されます。

水溶性りん酸との違い

水溶性りん酸とく溶性りん酸では、
成分を抽出するときの条件が異なります。

区分 基本的な意味 肥料としての見方
水溶性りん酸 水に溶けるりん酸 土壌水などに溶けやすく、根が利用できる形になりやすい
く溶性りん酸 2%クエン酸溶液に溶けるりん酸 水溶性りん酸を含み、水には溶けにくいが薄い酸には溶ける部分も含む

ここで特に注意が必要なのは、
く溶性りん酸の中には水溶性りん酸も含まれることです。

水に溶ける成分は2%クエン酸溶液にも溶けるためです。

例えば肥料の保証票に、

  • く溶性りん酸 10.0%
  • 内水溶性りん酸 8.0%

と表示されている場合、
く溶性りん酸10.0%の中に水溶性りん酸8.0%が含まれています。

したがって、
水には溶けにくいもののクエン酸には溶ける部分は、

10.0-8.0=2.0%

となります。

10.0%と8.0%を足して18.0%のりん酸が含まれるという意味ではありません。

く溶性りん酸はどのように分析するか

FAMICの肥料等試験法では、
肥料試料に2%クエン酸溶液を加え、
規定された温度・時間・振り混ぜ条件でりん酸を抽出して測定します。

代表的な試験条件では、
約30℃で1時間振り混ぜて抽出します。

このため「く溶性」は、
単に肥料の見た目や原料から判断する性質ではなく、
定められた分析方法によって評価される成分区分です。

肥料中のりん酸成分は、
肥料表示や分析では一般に五酸化りん(P2O5)として換算して表されます。

く溶性りん酸は、
C-P2O5などと略記されることがあります。

植物はく溶性りん酸をどのように利用するか

く溶性りん酸のうち水溶性部分は、
土壌中の水に溶けて植物が利用できる状態になりやすい成分です。

水には溶けにくくクエン酸には溶ける部分は、
植物の根から分泌される有機酸などの影響を受けて徐々に溶け出し、
植物に利用されることがあります。

この性質から、
水溶性部分と比較すると穏やかに作用するりん酸源として利用される場合があります。

ただし、

「く溶性りん酸=必ず緩効性」「一定期間ゆっくり効く」と決めつけることはできません。

く溶性はあくまで規定されたクエン酸抽出による分析上の区分です。

実際の圃場でどの程度りん酸が溶け、
作物に吸収されるかは、

  • 肥料の原料と粒径
  • 土壌pH
  • 土壌の種類
  • りん酸の固定程度
  • 作物の種類と根の活性
  • 地温や土壌水分
  • 施肥位置

などによって変わります。

く溶性りん酸を含む肥料

代表例として熔成りん肥(ようりん)があります。

熔成りん肥は、
りん鉱石などを高温で熔融処理して製造されるりん酸質肥料で、
公定規格でもく溶性りん酸が主成分として規定されています。

また、
化成肥料や配合肥料などでも、
製品の原料構成によって
く溶性りん酸と水溶性りん酸の両方が表示される場合があります。

肥料の種類名だけで判断せず、
生産業者保証票の成分表示を確認してください。

「く溶性りん酸が多いほど良い」とは限らない

りん酸は植物の必須元素であり、
ATPなどのエネルギー代謝、
核酸やリン脂質などの構成に関与します。

しかし、
りん酸肥料を多く施用すれば、
その分だけ発根、開花、結実、収量が増えるわけではありません。

土壌中にすでに十分なりん酸が蓄積している場合、
追加施用による効果が小さいことがあります。

過剰な施肥を続ければ、
施肥コストの増加や土壌中へのりん酸蓄積につながります。

したがって、
「花や実を増やしたいからりん酸を多く施す」という判断は適切ではありません。

土壌診断などによって
土壌中のりん酸状態を確認し、
作物、土壌、作型に応じて施肥量を決めます。

土壌診断の有効態りん酸とは別の指標

く溶性りん酸は肥料そのものを分析したときの成分区分です。

土壌診断で測定される「有効態りん酸」と
同じ意味ではありません。

肥料のく溶性りん酸が何%含まれているかという値と、
圃場土壌中に作物が利用可能なりん酸がどの程度存在するかという値は、
評価対象も分析方法も異なります。

肥料袋のく溶性りん酸含有率から、圃場のりん酸不足を判断することはできません。

液肥・養液栽培での注意

く溶性りん酸という表示は、
その肥料が水に完全に溶けることを保証するものではありません。

したがって、
く溶性りん酸を含む固形肥料を、そのまま液肥タンクや養液栽培設備に溶解して使用できるとは限りません。

点滴チューブ、
肥料混入器、
ノズルなどを使用する施肥では、
水への溶解性、不溶物、他成分との反応などを確認する必要があります。

液肥や養液栽培用肥料では、
「く溶性」という表示だけではなく、
製品が水溶肥料として設計されているか、
メーカーが指定する溶解濃度や使用方法を確認してください。

く溶性りん酸を見るときの注意点

  • 「く溶性=水溶性」ではない:水溶性は水、く溶性は2%クエン酸溶液への溶解性を基準とします。
  • く溶性りん酸には水溶性りん酸も含まれる:保証票の数値を単純に加算しないでください。
  • く溶性=一定の緩効性ではない:実際の溶出や肥効は土壌条件、肥料の性質、作物などによって変わります。
  • 含有率=土壌中の有効態りん酸ではない:肥料分析値と土壌診断値を混同しないでください。
  • りん酸含有量だけで施肥量を決めない:土壌診断、作物、作型、過去の施肥履歴を確認します。

関連する資材分類・農業用語

見つからない用語・製品の登録をリクエスト

個人情報の入力は不要です。掲載してほしい名称だけをお知らせください。

登録を希望する情報の種類

最近対応したリクエスト

  • 用語 鉢 掲載しました
  • 用語 がく 既存用語「萼」を再監修致しました
  • 用語 休眠解除 掲載しました