外胚乳(がいはいにゅう)

外胚乳とは

外胚乳(がいはいにゅう、perisperm)とは、胚珠内部にある母植物由来の珠心が、種子形成後も残存し、主に養分を蓄える組織として発達したものです。

「外胚乳」という名称ですが、重複受精によって形成される胚乳とは発生起源が異なります。

  • 外胚乳:母植物由来の珠心から形成される
  • 胚乳:中央細胞と精細胞との受精を起点として形成される

外胚乳は外乳(がいにゅう)、周乳(しゅうにゅう)と呼ばれることもあります。

キヌア、アマランサスなどでは、成熟種子の中央部に大きな外胚乳が残り、デンプンを中心とした貯蔵組織として機能します。

外胚乳は「胚乳の外側部分」ではありません。
外胚乳と胚乳は位置関係によって分けられた名称ではなく、発生起源が異なる別の組織です。

外胚乳はどのようにできるか

被子植物の胚珠では、珠心内部に大胞子母細胞が形成され、減数分裂を経て機能的大胞子が生じます。

機能的大胞子から胚嚢が発達し、その周囲には珠心組織が存在します。

多くの被子植物では、胚嚢の成長や受精後の胚乳・胚の発達に伴って珠心の大部分が退化します。

これに対して、一部の植物では珠心の大部分が消失せず、成熟種子まで残ってデンプンなどを蓄積します。

この残存・発達した珠心が外胚乳です。

基本的な流れは次のようになります。

珠心 → 種子形成中も残存・発達 → 貯蔵物質を蓄積 → 外胚乳

外胚乳と胚乳の違い

外胚乳と胚乳は、どちらも種子内で貯蔵組織として機能することがありますが、発生起源はまったく異なります。

外胚乳

外胚乳は、受精前から胚珠に存在する母植物由来の珠心から形成されます。

通常の二倍体植物では、珠心は母植物と同じ胞子体側の組織です。

胚乳

胚乳は、被子植物の重複受精で中央細胞が精細胞と受精した後に形成されます。

最も一般的なタデ型胚嚢では、胚乳形成を開始する核は通常3nとなります。

したがって、

  • 外胚乳:母植物の珠心由来
  • 胚乳:受精した中央細胞由来

という発生上の違いがあります。

「外胚乳=胚乳の外側」は誤りです。
両者は発生起源が違うため、隣接していても同一組織ではありません。

外胚乳と子葉の違い

種子では、外胚乳以外にも子葉が養分を蓄える場合があります。

  • 外胚乳:珠心由来の母植物側の組織
  • 胚乳:中央細胞の受精から形成される組織
  • 子葉:受精卵から形成される胚の一部

いずれも貯蔵組織になることがありますが、発生起源はそれぞれ異なります。

例えばダイズでは、成熟種子の主要な貯蔵組織は肥大した子葉です。

イネやコムギでは胚乳、キヌアやアマランサスでは外胚乳が主要な貯蔵組織になります。

キヌアの外胚乳

外胚乳を理解する代表的な作物がキヌアです。

キヌアでは、種子形成中に珠心の中央部が残存・発達し、大きな外胚乳になります。

成熟したキヌア種子では、外胚乳が種子中央部の大部分を占め、デンプンを大量に蓄積します。

日本で行われたキヌア種子の分画研究では、脱穀種子のうち外胚乳画分が約68.9%を占め、外胚乳の炭水化物含量は約79.7g/100gと報告されています。

一方、タンパク質や脂質は外胚乳よりも胚側に多く分布します。

つまり、キヌアの種子では、

  • 外胚乳:主としてデンプン・炭水化物の貯蔵
  • 胚:タンパク質や脂質を比較的多く含む

という組織による成分分布の違いがあります。

アマランサスの外胚乳

アマランサスも、外胚乳を大きく発達させる代表的な作物です。

アマランサス種子では、胚が外胚乳の周囲を取り囲むように配置され、中央部にデンプンを多く蓄えた外胚乳があります。

この構造はイネやコムギなどの穀類とは異なります。

穀類では種子・穀粒中央部の大きな貯蔵組織は主として胚乳ですが、アマランサスでは珠心由来の外胚乳が主要なデンプン貯蔵組織となります。

キヌア・アマランサスが擬似穀類と呼ばれる理由との関係

キヌアやアマランサスは、穀類と同じようにデンプンを多く含む種子を食用としますが、イネ科植物ではありません。

そのため、一般に擬似穀類・疑似穀類(pseudocereal)と呼ばれます。

種子の内部構造にもイネ科穀類との違いがあります。

  • イネ・コムギ・トウモロコシ:主要なデンプン貯蔵組織は胚乳
  • キヌア・アマランサス:主要なデンプン貯蔵組織は外胚乳

見た目や食品としての利用法が似ていても、植物学的には貯蔵組織の発生起源が異なります。

外胚乳をもつ植物

外胚乳を発達させる植物は、キヌアやアマランサスだけではありません。

外胚乳が主要または比較的大きな貯蔵組織として残る植物として、次のような例が知られています。

  • キヌア
  • アマランサス類
  • ホウレンソウ
  • スイレン類
  • コショウ類
  • フダンソウなど

ただし、外胚乳の大きさ、胚乳との割合、蓄積する成分は植物種によって異なります。

「外胚乳をもつ種子では胚乳が存在しない」とは限りません。

キヌアでは大きな外胚乳とともに、小さな胚乳も残ります。

外胚乳と胚乳は同時に存在できる

外胚乳と胚乳は発生起源が異なるため、同じ種子の中に両方が存在することがあります。

キヌアがその代表例です。

キヌアでは大きな外胚乳が主要な貯蔵組織となる一方、珠孔側には比較的小さな胚乳も残ります。

そのため、

外胚乳がある=胚乳がない

という関係ではありません。

種子形成中には、珠心、胚乳、胚がそれぞれ異なる程度に成長・退化し、成熟種子での組織比率が決まります。

外胚乳は生きた組織か

外胚乳の細胞状態は、植物種や種子の発達段階によって異なります。

キヌアでは、外胚乳となる珠心細胞が種子形成中に大きく拡大し、デンプンを蓄積します。

成熟に伴ってプログラム細胞死が進み、成熟した外胚乳は大きな薄壁細胞にデンプン粒が密に詰まった組織になります。

この点では、成熟したイネ科植物のデンプン性胚乳と形態・機能がよく似ています。

ただし、外胚乳とイネ科の胚乳が似ているのは貯蔵機能や成熟時の状態であり、発生起源は異なります。

外胚乳と種子発達

外胚乳を形成する植物では、珠心が単に受精前の状態のまま残るわけではありません。

例えばキヌアでは、種子形成の進行に伴って外胚乳細胞が拡大し、核内倍加やデンプン蓄積などの変化が起こります。

一方で、珠心の一部は成長する胚乳や胚によって消費されます。

最終的に中央部の珠心が大きく残り、外胚乳となります。

つまり外胚乳は、単なる「消え残った組織」ではなく、成熟種子の貯蔵組織として分化・発達する珠心由来組織です。

外胚乳と発芽

外胚乳に蓄積されたデンプンなどの貯蔵物質は、発芽後の芽生えの生育に利用されます。

この点では、胚乳や貯蔵性子葉と機能的に似ています。

ただし、外胚乳があることだけで発芽率や発芽勢を判断することはできません。

発芽には、

  • 胚の活力
  • 種子の成熟度
  • 休眠
  • 種皮の透水性
  • 貯蔵条件
  • 温度
  • 水分
  • 酸素

など多くの要因が関係します。

「外胚乳が大きい種子ほど発芽が良い」と一般化することはできません。

外胚乳と農業・食品利用

キヌアやアマランサスでは、外胚乳は収穫物の主要なデンプン貯蔵部分です。

このため、製粉、加熱、糊化、発酵などの加工特性を考える場合にも、外胚乳のデンプン組成や粒径などが関係します。

一方、タンパク質、脂質、ミネラルなどは胚や種皮側に比較的多く含まれる場合があります。

精白・搗精・分画などによって種子組織の比率が変われば、食品としての成分組成も変化します。

ただし、品種、栽培条件、成熟度、加工方法によって成分値は変動するため、特定の数値をキヌア・アマランサス全体へそのまま当てはめることはできません。

外胚乳と種子の充実を判断するときの注意

外胚乳をもつ作物で種子が小さい、軽い、発芽が悪いといった現象があっても、外観だけから「外胚乳の形成不良」と診断することはできません。

種子形成には、

  • 胚珠・珠心の形成
  • 胚嚢形成
  • 受粉・花粉管伸長
  • 重複受精
  • 胚・胚乳の発達
  • 珠心・外胚乳の発達
  • 母植物から種子への同化産物供給
  • 開花・登熟期の温度や水分

など多くの過程が関係します。

現場での注意:
種子の充実不足を「外胚乳不足」と単独で診断することはできません。特にキヌアやアマランサスでは、外胚乳だけでなく胚や少量の胚乳、種皮など複数の組織が種子品質に関係します。

外胚乳について間違えやすい点

  • 外胚乳=胚乳の外側ではありません。
    外胚乳は珠心由来、胚乳は重複受精に由来する別組織です。
  • 外胚乳=胚乳ではありません。
    見た目や貯蔵機能が似ていても発生起源が異なります。
  • 外胚乳=子葉ではありません。
    子葉は受精卵から形成される胚の一部です。
  • 外胚乳は受精によって直接形成される組織ではありません。
    受精前から存在する母植物由来の珠心が残存・発達した組織です。
  • 外胚乳がある種子に胚乳が存在しないとは限りません。
    キヌアでは大きな外胚乳と小さな胚乳が同じ種子内に存在します。
  • すべての種子に外胚乳があるわけではありません。
    多くの植物では珠心の大部分が種子形成中に退化します。
  • 外胚乳は単なる珠心の「残りかす」ではありません。
    キヌアなどでは細胞が発達し、デンプンを蓄積する主要な貯蔵組織になります。
  • 外胚乳が大きいほど発芽や収量が必ず良くなるわけではありません。
    種子形成・発芽には多数の要因が関係します。
  • イネやコムギの白い貯蔵組織を外胚乳とは呼びません。
    イネ科穀類の主要な貯蔵組織は重複受精由来の胚乳です。

外胚乳の参考資料

外胚乳の形成過程を珠心・胚乳・胚との関係まで正確に解説する、公的機関・大学等による適切な日本語動画は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。

キヌアについては、種子を実際に組織分画した国内研究があり、外胚乳が種子の大部分を占め、炭水化物に富むことが確認されています。外胚乳を食品・農作物として理解する資料として参考になります。

日本栄養・食糧学会誌「キノア種子の分画とその栄養成分」を見る

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