生分解性マルチ

生分解性マルチ

生分解性マルチとは

生分解性マルチとは、栽培終了後に土壌へすき込むことで、
土壌中の微生物の働きによって最終的に水や二酸化炭素などへ分解されるよう設計された
マルチフィルムです。

一般的なポリエチレン製マルチでは、
使用後にフィルムを剥ぎ取り、圃場外へ回収して処理する必要があります。
生分解性マルチでは、この剥ぎ取り・回収工程を減らせることが大きな特徴です。

土の上へ放置しておけば自然に消える資材ではありません。
栽培終了後は製品の使用方法に従い、土壌へ十分にすき込んで分解を進めます。

「生分解性」と「植物由来」は別の意味

生分解性マルチに使われる生分解性プラスチックには、
植物などのバイオマス資源を原料とするものと、
化石資源由来の原料を使用するものがあります。

生分解性=植物由来ではありません。
「生分解性」は微生物などによって分解される性質を示し、
「バイオマス由来」は原料の由来を示します。

製品を比較するときは、生分解性の有無と、
バイオマス由来原料の使用割合を分けて確認します。

生分解性マルチはどのように分解するか

フィルムが細かく裂けたり、目に見えなくなったりしただけでは、
生分解が完了したとは判断できません。
材料が低分子化された後、微生物に利用され、
最終的に水や二酸化炭素などへ変化していく過程までを含みます。

分解速度は一定ではありません。
土壌温度、土壌水分、土質、微生物活性、季節、地域、
フィルムの組成などによって変化します。

メーカーが示す「短期」「中期」「長期」などの区分は、
栽培期間に合った製品を選定するための目安です。
圃場で完全に消失する時期を保証する表示ではありません。

生分解性マルチの主な利点

剥ぎ取り・回収作業を減らせる

ポリエチレン製マルチでは、収穫後にフィルムを剥がし、
付着した土や作物残渣を落として圃場外へ搬出する作業が必要です。
生分解性マルチは、使用後に土壌へすき込むことで、
この回収工程を省ける場合があります。

例えばスイートコーンでは、太い茎や根がマルチ回収の妨げになります。
生分解性マルチを使用すると、茎葉を処理した後にフィルムとともにすき込めるため、
次作準備までの作業時間を短縮できる場合があります。

使用済みポリマルチの排出を減らせる

適切に使用し、栽培終了後に土壌へすき込むことで、
使用済みポリエチレンマルチとして回収・処理する量を減らせます。

生分解性であっても圃場外へ飛散させてよいわけではありません。
水路、河川、道路などへ流出しないよう管理します。

次作への切り替えを早められる場合がある

剥ぎ取り・回収工程を省けることで、
収穫後の残渣処理、耕起、
次作準備へ早く移れる場合があります。

労働力不足や短い作付け間隔が問題となる経営では、
資材価格だけでなく作業時間の削減効果も含めて導入を判断します。

色や機能は製品によって異なる

生分解性マルチにも黒、透明、白黒、銀ネズ、グリーンなどがあり、
色やフィルム構造によって栽培上の作用が異なります。

黒色系は遮光による雑草抑制、
透明系は地温上昇、
白黒系などは高温期の地温上昇抑制を目的とした製品があります。

「生分解性」という性質だけでは、地温や雑草抑制性能は決まりません。
作物、作型、季節に合わせて色と機能を選定します。

生分解性マルチを選ぶときの注意点

栽培期間と分解タイプを合わせる

分解が早すぎると、栽培途中でフィルムが裂れ、
雑草抑制や地温調節などの機能を維持できなくなる場合があります。

逆に、収穫時にも十分な強度が残っていると、
すき込み時にフィルムがロータリーへ絡み付く場合があります。

作物名だけでは判断できません。
定植・播種から収穫終了までの期間、地域、季節、土壌条件を含めて製品を選びます。

土壌消毒剤・堆肥などとの組み合わせを確認する

生分解性マルチは製品によって、
クロルピクリン、カーバムナトリウム塩などの土壌消毒剤、
未熟堆肥、作物残渣、土壌改良資材などの影響を受け、
早期劣化・早期分解が起こる場合があります。

これらを同時または直前に使用する場合は、
対象製品の使用条件を確認します。

水分管理をポリエチレンマルチと同じにしない

生分解性マルチには、
一般的なポリエチレン製マルチより水蒸気を通しやすい製品があり、
土壌が乾きやすくなる場合があります。

水分保持性能を改善した製品もあります。
生分解性マルチは保湿性が高い、または低いと一括して判断できません。

作物と土壌条件に合わせて、
灌水・かん水量や頻度を調整します。

展張時の注意

基本的な展張方法は一般のマルチフィルムと似ていますが、
許容される張力は製品によって異なります。

強く張りすぎると、植え穴、畝肩、覆土部分などへ力が集中し、
裂けや早期破損につながる場合があります。
機械展張では、対象製品に合わせてテンションを調整します。

石や硬い作物残渣などが多い畝では、
フィルムを傷つける原因になるため展張前に畝面を整えます。

収穫後は土壌へ十分にすき込む

収穫後は、生分解性マルチを土壌へ十分にすき込みます。
地表へフィルム片が多く残っている場合は、再度すき込みます。

地表へ露出した状態では分解が進みにくく、
風によって圃場外へ飛散するおそれがあります。

生分解性でも飛散させない。
土壌中で分解するよう設計された資材が、
水路や河川などでも同じ条件で分解するとは限りません。

保管時の注意

生分解性マルチは、高温、多湿、直射日光などによって
使用前から強度低下や劣化が進む場合があります。

メーカー指定の保管条件を確認し、
必要以上の長期在庫は避けます。
シーズンをまたいだ保管を推奨していない製品もあります。

価格ではなく総コストで比較する

一般に、生分解性マルチはポリエチレン製マルチより
フィルム自体の購入価格が高くなる傾向があります。

導入判断では、資材価格に加えて、
剥ぎ取り、残渣分離、回収、運搬、廃棄処理に必要な労働時間と費用を含めて比較します。

剥ぎ取りが容易な作物や処理費が低い地域では、
材料価格の差を回収できない場合もあります。
経済性は作物、作型、経営規模、労賃、処理費によって変わります。

生分解性マルチで間違えやすい点

よくある誤解 正しい考え方
生分解性なら植物由来 誤りです。化石資源由来の生分解性プラスチックもあります。
畑に置いておけば消える 収穫後は土壌へ十分にすき込むのが基本です。
細かくなれば分解完了 破砕・崩壊と最終的な生分解は別です。
早く分解するほど高性能 栽培中は必要な期間、マルチ機能を維持する必要があります。
生分解性マルチはすべて弱い 機械展張に対応する製品もあり、強度は製品ごとに異なります。
土壌改良材として働く 生分解することだけを根拠に土壌改良効果を与えることはできません。
環境負荷がゼロになる 廃プラスチックの排出や回収工程を減らせますが、環境負荷がゼロになるわけではありません。

生分解性マルチ取り扱いメーカー・代理店

製造・発売元製品名・製品群用途分類特徴・注意点
アキレス株式会社ビオフレックスマルチプラス生分解性マルチ黒・透明・銀ネズ・白黒などを展開。強度と柔軟性を持たせ機械展張に対応。色によって地温・雑草抑制性能が異なり、分解速度は土壌・環境条件で変化する。
アキレス株式会社ビオフレックスマルチBPバイオマス配合生分解性マルチ植物由来の生分解性プラスチックを25%以上配合した黒色タイプ。比較的長期間展張する作物で使用実績がある受注生産品。
アキレス株式会社ビオらいと作物対応型生分解性マルチ2026年2月発売。トウモロコシ・サツマイモ向けに生分解速度を高めた黒色タイプ。軽量設計で機械展張に対応。
大倉工業株式会社エコロームFC生分解性マルチ生分解性プラマーク取得品。使用後に土壌へすき込むことで回収作業を省力化できる。分解速度は土壌などの自然条件で変化する。
サンプラック工業株式会社サンバイオシリーズ生分解性マルチ半透明・黒・グリーン・スーパーホワイトを展開。色によって地温上昇・雑草抑制特性が異なる。土壌・季節・天候で分解速度が変化する。
住化積水フィルム株式会社野土加(のどか)生分解性マルチ土壌へ鋤き込むことで撤去作業を省力化する生分解性マルチ。メーカーも使用条件によって分解速度が変わると明記している。
辻野プラスチックス工業株式会社ビオマルチ/バイオマルチ/ビオトップ生分解性マルチ日本バイオプラスチック協会の現行登録でマルチフィルムとして確認。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。
株式会社ユニックキエ丸生分解性マルチ日本バイオプラスチック協会の生分解性プラマーク登録およびエコマーク認定を確認。透明・黒・白黒などを展開。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。
株式会社ユニックユニグリーンマルチフィルム生分解性マルチ日本バイオプラスチック協会の現行登録でマルチフィルムとして確認。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。
渡辺パイプ株式会社 グリーン事業部エコビオワン S・M・L分解タイプ選択型生分解性マルチ短期S・中期M・長期Lを展開。作物・栽培期間に応じて分解タイプを選択する。旧Bio-PAL表記から現行シリーズへ更新推奨。
MKVアドバンス株式会社カエルーチ生分解性マルチ透明・黒・銀ネズを展開する標準タイプ。機械展張に対応。土壌条件・天候・地温・土壌消毒剤などによって分解速度が変化する。
MKVアドバンス株式会社カエルーチL中長期向け生分解性マルチカエルーチより分解が緩やかに進むタイプ。展張時は通常ポリよりやや緩めに張るようメーカーが案内。
MKVアドバンス株式会社カエルーチV中長期向け生分解性マルチカエルーチLよりさらに分解が緩やかに進むタイプ。長めの栽培期間に対応するための選択肢。
みかど化工株式会社スーパードロン中期分解型生分解性マルチ黒色の中期分解タイプ。適度な伸縮性を持ち、畝への密着性を考慮した製品。土壌消毒剤、未熟堆肥、高温・多湿などによる早期劣化に注意。
みかど化工株式会社スーパードロンWB白黒生分解性マルチ表面白・裏面黒の中期分解タイプ。高温期の地温上昇抑制を目的とする。地温差はメーカー試験条件に依存する。
みかど化工株式会社イモイモマルチ短期分解型生分解性マルチ比較的早期から分解を進めたい作型向けの黒色タイプ。受注生産。圃場条件によって分解速度は変化する。
岩谷マテリアル株式会社ナトゥーラ生分解性マルチ一般農ポリと同程度の強度をうたい、機械展張に対応。黒・透明などを展開。土質・温度・土壌消毒剤などで分解・耐久性が変化する。
タキロンシーアイ株式会社キエール黒/キエール白黒生分解性マルチ日本バイオプラスチック協会の現行登録で両製品を確認。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。
昭光通商株式会社Nature Master(ネイチャーマスター)生分解性黒マルチ2025年正式販売開始の生分解性黒マルチ。2026年2月時点で累計3,000本出荷を公表。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。

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