捕虫器とは
捕虫器とは、昆虫が特定の光や色などに誘引される性質を利用し、粘着シート、ファンと捕虫ネットなどによって飛翔昆虫を捕獲する機器です。
高電圧の電撃格子で昆虫を殺虫する「電撃殺虫器」と異なり、捕虫器では誘引した昆虫を粘着面やネットなどに保持する方式が一般的です。
農業では、施設内の害虫密度を低減する目的のほか、害虫の発生状況を確認するモニタリングにも利用されます。
ただし、すべての害虫が光や色に同じように誘引されるわけではありません。
対象害虫の種類、光源の波長、周囲の明るさ、気温、設置位置などによって捕獲効果は大きく変わります。
そのため、捕虫器だけに防除を依存せず、防虫ネット、粘着捕虫シート、天敵、農薬などを組み合わせた総合的病害虫管理(IPM)の一手段として利用することが重要です。
捕虫器の主な方式
粘着式
誘虫ランプなどで飛翔昆虫を誘引し、器具内部や周囲に設置した粘着紙・粘着シートで捕獲する方式です。
電撃による放電音や虫体の飛散がなく、捕獲した虫を確認できるため、発生状況の把握にも利用できます。
ファン吸引式
光などで誘引した昆虫をファンで吸い込み、捕虫袋やネット内へ閉じ込める方式です。
粘着紙を使用しない製品もあり、多数の飛翔昆虫を連続的に捕獲できます。
一方、ファンを使用するため運転音が発生します。
農業用の光誘引・捕獲型
施設園芸向けには、対象害虫の光に対する反応を利用し、特定の光源や反射板と吸引・捕獲機構を組み合わせた製品があります。
コナジラミ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、有翅アブラムシなど、対象害虫や作物に合わせて機種を選定する製品もあります。
農業で捕虫器を使用する目的
- 施設内へ侵入した飛翔害虫の捕獲
- 施設内で発生した害虫密度の低減
- 害虫の発生時期や発生量の確認
- 農薬、防虫ネット、天敵などと組み合わせた総合防除
- 選果場、調製施設、農産物保管場所などでの飛翔昆虫対策
捕虫器には、栽培ハウス向けに開発された製品と、食品工場・倉庫・バックヤードなどの屋内施設向け製品があります。
屋内用捕虫器だからといって、農業用ハウスでも使用できるとは限りません。
農業用ハウスでは高湿度、結露、散水、農薬散布など、一般建築物とは異なる環境になるため、使用可能な湿度、防水・防滴性能、薬剤への耐性などを確認して機種を選定してください。
捕虫器を選ぶポイント
対象害虫を確認する
捕虫器は、対象害虫が使用する光や色などに誘引されることが前提です。
コナジラミ、アザミウマ、ハモグリバエ、有翅アブラムシなどでも、種類や発育段階によって反応は異なります。
「飛翔害虫なら何でも捕れる」と判断せず、メーカーが示す対象害虫と使用条件を確認してください。
防除目的か発生確認目的かを明確にする
少数の捕虫器を設置して害虫の発生を確認する場合と、多数設置して害虫密度そのものを低減する場合では、必要な設置台数や配置が異なります。
捕獲数が多いことだけで防除効果を判断せず、作物上の害虫密度や被害程度も合わせて確認してください。
設置位置が重要
光誘引式捕虫器では、害虫の侵入場所や生息場所、作物の高さなどを考慮して設置します。
製品によって推奨される高さや設置台数が異なるため、メーカーの施工条件を確認してください。
また、誘虫光が出入口や換気口から施設外へ強く漏れると、施設外の昆虫を周辺へ誘引する場合があります。
出入口や開口部との位置関係にも注意してください。
作物への光の影響を確認する
光を利用する捕虫器では、作物によっては照射する光の波長や点灯時間が生育や花芽形成などに影響する場合があります。
特に光に敏感な作物では、作物専用型や適切な設置方法が用意されている場合があります。
対象作物との適合性を確認してから導入してください。
天敵・訪花昆虫を利用している場合は注意する
捕虫器は、誘引された昆虫が害虫か有益昆虫かを完全に識別して捕獲する装置ではありません。
天敵昆虫やミツバチ、マルハナバチなどを利用している施設では、非標的昆虫の捕獲にも注意が必要です。
天敵や訪花昆虫を導入している場合は、使用する捕虫器の光源、設置場所、点灯時間などとの適合性を確認してください。
捕虫器と電撃殺虫器の違い
捕虫器と電撃殺虫器は、どちらも光などで昆虫を誘引する製品がありますが、捕獲方法が異なります。
- 捕虫器:粘着紙、ファン、ネットなどで昆虫を捕獲・保持する
- 電撃殺虫器:高電圧を印加した電撃格子へ接触させて殺虫する
捕虫器取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 捕獲方式 | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|---|
| 株式会社光バイオ | 光防虫器 GAC型 | 光誘引・捕獲 | 施設園芸向け。コナジラミ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、有翅アブラムシなどを対象とした光誘引型 |
| 株式会社光バイオ | 光防虫器 GACA型 | 光誘引・捕獲 | 施設園芸向け。主にアザミウマ類を対象とした光誘引型。作物・害虫に応じて設置位置や台数を選定 |
| 株式会社光バイオ | 光防虫器 HF型 | 光誘引・ファン吸引 | 施設園芸向け。作物を揺らして飛翔したコナジラミ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、有翅アブラムシなどを吸引・捕獲。台車型あり |
| 株式会社石崎電機製作所 | SURE MC-8300 | ファン吸引・捕虫袋 | 屋内用。誘虫ランプで誘引しファンで網袋へ捕獲。有効面積60~120㎡ |
| 株式会社石崎電機製作所 | SURE MC-400・MC-500 | 光誘引・粘着紙 | 屋内用粘着式。MC-400はオープン型、MC-500はクローズド型 |
| DKテック株式会社 | インセクトキャッチ | 光誘引・粘着シート | 屋内用粘着式。SIC20100・20105・20200・20205を展開。ステンレス仕様あり |
| 株式会社ピオニーコーポレーション | 捕虫器 G-201 | 光誘引・粘着紙 | 屋内用。SUS304本体、吊下げ・壁掛け対応。有効面積40~60㎡ |
| ベンハー芙蓉株式会社 | ムシポン MPX-2000-IP | 光誘引・粘着紙 | 防水・防湿・防塵型(IP55)。湿度90%RH対応。有効面積30~50㎡ |