防蛾灯とは
防蛾灯とは、黄色光や緑色光などを夜間に照射し、オオタバコガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウなど夜行性の蛾類成虫の行動を抑制するために使用する物理的防除資材です。
一般的な農業用防蛾灯は、光で害虫をおびき寄せて捕獲する「捕虫器」とは仕組みが異なります。
夜間に特定の波長の光を照射することで、夜蛾類の飛翔、圃場への侵入、交尾、産卵などの行動を抑え、結果として作物上での幼虫発生や被害を減らすことを目的とします。
なお、防蛾灯は作物上に存在する卵や幼虫を直接殺虫する装置ではありません。
すでに発生している幼虫への防除や、防蛾灯の対象になりにくい害虫については、防虫ネット、発生予察、フェロモン剤、天敵、登録農薬など他の防除方法と組み合わせる必要があります。
防蛾灯の仕組み
夜行性の蛾類は暗い環境で活発に飛翔し、交尾や産卵などを行います。
防蛾灯では、夜間に黄色光などを照射することで夜蛾類の正常な夜間行動を妨げ、忌避や行動抑制を起こさせます。
使用する波長は製品によって異なります。
黄色LED防蛾灯では570~580nm付近を利用する製品がありますが、「防蛾灯は570nm」と一律に決まっているわけではありません。
また、緑色光など異なる波長を利用する製品もあります。
防蛾効果は波長だけで決まるものではありません。
照度、照射方向、灯具の配置、設置高さ、作物の草丈や葉による遮光、圃場周辺からの飛来方向などによって、実際の効果は大きく変わります。
防蛾灯の主な対象
防蛾灯は主として夜間に活動する蛾類成虫を対象として利用されます。
対象となる害虫は製品や作物によって異なりますが、農業現場では次のような夜蛾類の対策に利用されています。
- オオタバコガ
- ハスモンヨトウ
- シロイチモジヨトウ
- ヨトウガ類
- 果実を加害する吸蛾類
- その他、製品メーカーが対象としている夜行性蛾類
ただし、同じ蛾類であっても光に対する反応は同一ではありません。
対象害虫がその製品の防除対象として確認されているかを、メーカー資料や地域の防除情報で確認してください。
防蛾灯の効果を左右するポイント
圃場内に暗い場所を作らない
防蛾灯では、灯具の近くだけが明るくても十分ではありません。
灯具の間隔が広すぎたり、樹冠や作物、施設骨材などによって影ができたりすると、照度の低い部分で防除効果が低下する場合があります。
黄色LED防蛾灯を利用したネギの実証では、圃場全体で最低照度1lux以上となるよう設置して効果が確認された事例があります。
ただし、この「1lux」はすべての作物・害虫・製品に共通する基準ではありません。
使用する製品の設置基準に従ってください。
既にいる幼虫は別に防除する
防蛾灯の主な対象は夜間に活動する成虫です。
点灯を開始した時点ですでに作物上に卵や幼虫が存在している場合、防蛾灯だけでそれらを除去することはできません。
圃場を定期的に観察し、卵塊や若齢幼虫の発生状況を確認するとともに、必要に応じて登録農薬や生物農薬など他の防除方法を組み合わせてください。
防蛾灯で防除できない害虫もいる
防蛾灯はすべての害虫を対象とするものではありません。
例えば、アザミウマ類、ハモグリバエ類、コナジラミ類などについては、黄色防蛾灯だけで十分な防除ができるとは判断できません。
実際の害虫相を確認し、防虫ネット、粘着捕虫シート、天敵、農薬などを組み合わせた総合的病害虫管理(IPM)として使用することが重要です。
黄色光と緑色光の違い
黄色光
黄色光は、夜行性蛾類の行動抑制を目的とする防蛾灯で古くから利用されてきました。
現在は蛍光灯から省電力・長寿命のLEDへ移行しており、黄色LEDを使用したさまざまな農業用防蛾灯が販売されています。
黄色LEDの波長や照射方法は製品によって異なるため、単純に「黄色であれば同じ防蛾効果が得られる」と判断してはいけません。
農業用防蛾灯として効果や設置方法が確認されている製品を選定してください。
緑色光
緑色光を利用した防蛾技術は、黄色光による夜間照明が花芽形成などへ影響する作物への対策として研究・利用されています。
ただし、「緑色光なら作物に影響しない」という理解は誤りです。
作物や品種によって光への感受性は異なり、緑色光でも花芽形成や開花時期などへ影響する場合があります。
短日植物・長日植物や光に敏感な品種で使用する場合は、使用する製品について作物・品種との適合性を確認してください。
作物への光の影響に注意
防蛾灯は夜間に照明を行うため、害虫だけでなく作物にも光を与えます。
そのため、日長に反応して花芽形成、抽苔、開花などが変化する作物では特に注意が必要です。
キクなどの短日植物、ホウレンソウなど日長に敏感な作物、水稲などでは、照明の波長・照度・照射時間・設置位置によって生育や開花・出穂に影響する可能性があります。
また、自分の圃場だけでなく、隣接する水田や花き圃場など日長反応の強い作物へ光が漏れないよう配慮する必要があります。
照射方向を変更できる製品では、周囲への光漏れも含めて設置方法を検討してください。
防蛾灯を選ぶポイント
- 対象となる害虫がメーカーの対象害虫に含まれているか
- 対象作物への夜間照明の影響が確認されているか
- 必要な照射範囲に対して灯具数が適切か
- 作物や樹冠による影ができにくい配置が可能か
- 露地・施設など使用環境に適した防水・防塵性能があるか
- 電源方式、配線距離、漏電対策が適切か
- 周辺圃場や住宅への光漏れを抑えられるか
防蛾灯だけに防除を依存しない
防蛾灯は農薬に依存しない物理的防除方法の一つですが、設置しただけですべての害虫被害を防げるものではありません。
害虫の発生状況を確認し、防虫ネット、フェロモン剤、粘着トラップ、天敵、耕種的防除、登録農薬などを適切に組み合わせてください。
防蛾灯は総合的病害虫管理(IPM)の一手段として位置付けることが適切です。
また、防蛾灯の導入によって必ず農薬費が削減できる、収量が増える、収益が向上すると断定することはできません。
効果と経済性は、対象害虫の発生量、作物、圃場規模、灯具数、電源設備、他害虫の発生状況などによって異なります。
防蛾灯取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 主な対象・用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 株式会社光バイオ | 光防虫器 GR型 | 主に夜蛾類 | 夜間照射によって夜蛾類の飛来・交尾・産卵などの行動を抑制。10aあたり6~10台がメーカー設置目安。光の影響を受ける作物向けにGRK型も用意 |
| 株式会社光バイオ | 光防虫器 GRC型 | 夜蛾類などの夜行性害虫 | 夜蛾類の行動抑制に加え、カメムシ類・甲虫類などを捕獲する機構を備える。光に敏感な作物向け型式あり |
| 株式会社光バイオ | 光防虫器 GN型 | 大面積圃場の夜蛾類 | 広範囲照射型。果樹・野菜・花きなどの夜蛾対策向け。設置条件は圃場・作物に応じて確認 |
| 株式会社光波 | レピガード®シャイン | ヤガ科害虫 | ヤガ科害虫の行動抑制を目的とした専用LED防蛾灯 |
| 株式会社ネイブル | レピガードST | ヤガ科害虫 | 570nm黄色LED。小型・軽量・防水仕様で施設・露地に対応。AC100Vまたは太陽光発電システムを利用可能 |
| 株式会社ユニコ ゼロビーム事業部 | スーパーモスバリアⅡ・モスバリアⅡ | 夜蛾類 | 広範囲照射型LED防蛾灯。灯具直下にも照射する構造を採用 |
| 株式会社ユニコ ゼロビーム事業部 | モスバリアFORフラワー | 夜蛾類・光に敏感な作物 | 短日・長日作物への光影響を抑えるよう照射方法を工夫した防蛾灯。作物・品種への影響は個別確認が必要 |
| 株式会社セイコーステラ エコロジア事業部 | 虫ブロッカー黄 | 夜行性の蛾類 | 578nm黄色LED、IP67準拠。露地・ハウス向け。単独タイプ・連結タイプを用意。製造:アルファクス株式会社 |
参考資料
農林水産省:黄色LED防蛾灯による小面積防除技術マニュアル(普及の手引き)
黄色LED防蛾灯による小面積防除技術マニュアル
農研機構:光を利用した害虫防除のための手引き
光を利用した害虫防除のための手引き