す入り(鬆入り)とは
す入り(すいり・鬆入り)とは、主にダイコンなどの根菜類で、肥大した根の内部組織がスポンジ状になり、肉質や食感が低下する生理障害です。
ダイコンでは、根の肥大に対して葉から供給される光合成産物などが十分に追いつかず、根内部の組織が栄養飢餓や老化状態になることが発生に関係します。収穫が遅れて過熟になった場合のほか、高温条件などで生育や根の肥大が進みすぎた場合にも発生しやすくなります。
す入りは病原菌による病害ではありません。また、ダイコン内部に大きな空洞ができる「空洞症」とも発生機構が異なるため、両者を同じ障害として扱わないことが重要です。
す入りが発生する仕組み
ダイコンの肥大根は、葉でつくられた光合成産物などを受け取りながら肥大します。
根の肥大速度が速くなりすぎたり、葉から根への同化産物の供給が不足したりすると、根内部の柔組織が十分に充実できず、次第にスポンジ状になります。これが「す入り」と呼ばれる状態です。
したがって、単純に「根の中の細胞が死んで空洞になる現象」と説明するのは正確ではありません。根の肥大、同化産物の供給、組織の老化などが関係する生理的な品質障害として理解する必要があります。
す入りが発生しやすい条件
- 収穫の遅れ:適期を過ぎて根が過熟になると、す入りの危険性が高まります。
- 高温条件:高温によって生育が進みすぎたり、呼吸による同化産物の消耗が増えたりすると、す入りが発生しやすくなることがあります。
- 根の急速な肥大:根の肥大速度に対して同化産物の供給が追いつかない場合、内部組織が十分に充実しないことがあります。
- 葉の機能低下:病害虫、霜害、葉の老化などによって健全な葉面積が減少すると、根へ供給できる光合成産物が不足する要因になります。
- 抽だい:抽だい・抽苔が進むと、花茎など生殖生長側にも同化産物が利用されるため、根の品質低下やす入りが早まる場合があります。
- 品種特性:す入りの発生しやすさには大きな品種間差があります。栽培時期や作型に適した、す入りの遅い品種を選ぶことも重要です。
施肥量や土壌水分だけから、す入りの発生を判断することはできません。多肥によって根の肥大が過度に促進される場合もあれば、肥料切れや葉の生育不良によって同化産物の供給が不足する場合もあります。
「肥料を多くすれば防げる」「水を多くすれば防げる」と一律に判断するのは誤りです。
す入りと空洞症の違い
ダイコンを切った際に内部に隙間が見える障害として「空洞症」がありますが、す入りとは区別して考えます。
| 項目 | す入り | 空洞症 |
|---|---|---|
| 主な状態 | 根内部の組織がスポンジ状になり、肉質が粗くなる | 根内部に比較的大きな空洞が形成される |
| 発生機構 | 根組織の栄養飢餓や老化などが関係する | 肥大初期に生じた細胞間の空隙が十分に埋まらず残ることなどが関係する |
| 発生要因 | 収穫遅れ、高温、急速な肥大、同化産物供給不足、品種特性など | 肥大初期の高温などの環境条件や品種特性など |
「中心部に穴がある=す入り」とは限りません。大きく明瞭な空洞が形成されている場合には、空洞症など別の生理障害も疑う必要があります。
す入りの確認方法
す入りは根の内部で進行するため、外観だけでは確実に判定できない場合があります。
収穫期が近づいたら代表株を試し掘りし、根を切断して内部組織を確認する方法が確実です。す入りが進んだ根では、内部が白っぽく粗いスポンジ状となり、組織の緻密さが失われます。
ダイコンでは、古い葉の葉柄基部を切った際の内部の状態を、す入りの進行を推測する目安として利用する方法も知られています。ただし、葉柄の状態だけで根内部のす入りを確定することはできません。出荷判断では、実際に根を切断して確認する方が確実です。
す入りを防ぐための考え方
最も基本となる対策は、品種と作型に応じた適期収穫です。大きく育てることを優先して収穫を遅らせると、重量が増えても内部品質を損なう場合があります。
高温期の栽培では、収穫日数だけで機械的に判断せず、実際の肥大速度や気温、生育状態を確認します。葉を健全に維持し、極端な肥料切れ、過剰施肥、土壌水分の急変を避けることも基本となります。
また、す入りの発生時期には品種間差があるため、特に高温期や在圃期間を長くする作型では、種苗会社などが示す「す入りの早晩」や適作型を確認して品種を選定します。
す入りでよくある誤解
- 「内部に穴があればす入り」:空洞症など別の生理障害があります。内部症状と発生条件を分けて判断します。
- 「す入りは病気」:病原菌による病害ではなく、生育と組織の老化などに関係する生理障害です。
- 「収穫遅れだけが原因」:収穫遅れは重要な要因ですが、高温、急速な肥大、葉の機能低下、抽だい、品種特性なども関係します。
- 「追肥すれば防げる」:肥料不足だけが原因ではありません。過剰な生育や急激な根肥大も発生に関係するため、生育全体を見て判断します。
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