ukabis(うかびす)とは、農産物・食品の生産から加工・流通、販売・消費などにまたがる情報を連携するために構築されたスマートフードチェーンプラットフォームです。
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「スマートバイオ産業・農業基盤技術」の研究開発によって構築され、生産者、流通事業者、食品事業者、システム事業者などの間で、フードチェーンに関係するデータを連携・活用できる環境の整備を目的としています。
ukabis自体が農産物の品質や安全性を保証したり、導入するだけで物流やフードロスを自動的に改善したりするものではありません。識別情報や生産・流通情報を正確に記録し、関係するシステムや事業者間で適切に連携して初めて、トレーサビリティ、物流効率化、需給調整などに活用できます。
ukabis(うかびす)とは
ukabisは、食に関係する各段階で個別に管理されてきた情報を、事業者やシステムの境界を越えて利用できるようにする情報連携基盤です。
公式サイトでは、対象となるフードチェーンを「生産」「加工・流通」「販売・消費」「資源循環」「育種/品種改良」まで含むものとして位置付けています。
農産物では、生産・出荷段階の情報だけでなく、流通時の取り扱い、商品やロットを識別する情報などをつなげることで、生産から流通・販売までを追跡できる仕組みの構築などに利用できます。
英語では、農林水産省の英語資料などでSmart Food Chain Platform(ukabis)と表記されています。
ukabisが構築された背景
農産物や食品の流通では、生産者、JA、卸売市場、物流事業者、小売事業者などがそれぞれ異なるシステムや帳票を利用しているため、同じ情報の再入力や紙・FAXによる情報伝達が残りやすく、工程をまたいだデータ利用が難しい場合があります。
こうした情報の分断を減らし、生産から販売・消費までのデータを相互に活用する「スマートフードチェーン」を実現する基盤としてukabisが開発されました。
研究開発は、内閣府のSIP第2期「スマートバイオ産業・農業基盤技術」で進められ、2022年4月に試験提供が開始されました。同年8月には、継続的な運営を担う組織として一般社団法人スマートフードチェーン推進機構が設立されています。
ukabisで連携する情報
ukabisで扱われる情報は利用するサービスやシステムによって異なります。代表的には、次のような情報がデータ連携の対象になります。
- 商品や農産物を識別するための商品コード・個品識別番号・ロット番号
- 生産者、産地、商品属性などの情報
- 生産・収穫・選別・出荷などに関する情報
- 入荷、出荷、輸送、保管、販売などの流通情報
- 温度・湿度・衝撃など、流通時の環境や取り扱いに関する情報
すべての利用者がこれらの情報を必ず登録するという意味ではありません。どの情報を扱うかは、利用するサービス、対象品目、流通形態、システム構成などによって変わります。
ukabisの主な活用分野
トレーサビリティ
農産物や食品を識別する情報と、生産・出荷・流通などの履歴を関連付けることで、どの商品がどの経路を通って流通したかを確認する仕組みの構築に利用できます。
問題が発生した際の原因調査や対象ロットの特定、産地情報などの提供にも利用できます。
流通情報のデジタル化
産地と卸売市場などの間で、紙伝票やFAX、手入力によって受け渡していた情報をシステム間で連携することで、転記作業や入力作業を削減できる可能性があります。
実際にukabisを利用した実証では、JAと青果卸売市場のシステム間でデータを連携し、市場側の入荷作業の効率化を検証した事例があります。
需給・物流情報の活用
出荷情報、販売情報などを組み合わせることで、出荷予測や需要予測、物流計画などに利用できる可能性があります。
ただし、データを連携しただけで需要予測や物流最適化が成立するわけではありません。必要なデータの種類、量、精度、更新頻度に加え、分析するシステムや運用体制が必要です。
フードチェーン情報公表農産物JASとの関係
ukabisの研究開発では、農産物の流通行程に関する情報を記録・保存・公表する仕組みについても検討され、2023年には「フードチェーン情報公表農産物」(JAS 0029)が制定されました。
このJASでは、農産物ごとの識別番号を付与し、流通行程管理基準の適用状況などのフードチェーン情報を記録・保存・公表します。
なお、ukabisを利用することとJAS認証を取得することは同じではありません。JAS認証には規格で定められた要求事項への適合と、登録認証機関による認証が必要です。
ukabisについて誤解しやすい点
「ukabisに登録すればトレーサビリティが完成する」は誤り
トレーサビリティには、農産物やロットを識別する情報と、それぞれの工程で発生した記録を途切れず関連付ける仕組みが必要です。
ukabisはそのデータ連携を支える基盤であり、元になる記録が欠落していたり、識別番号が工程間で正しく引き継がれていなかったりすれば、十分な追跡はできません。
「QRコードが付いていればukabis」は誤り
QRコード(二次元コード)は情報へアクセスするための手段の一つです。QRコードそのものがukabisではありません。
重要なのはコードの外見ではなく、その識別番号と生産・流通情報が正しく関連付けられ、必要な相手が利用できる状態になっているかどうかです。
「すべてのデータを一つのデータベースへ集める仕組み」とは限らない
ukabisの本質はデータ連携です。既存システムやサービスが持つデータを連携して利用することも想定されているため、「各事業者の情報をすべて一か所へ移して一元管理するシステム」と理解すると正確ではありません。
「導入すればフードロスや物流費が減る」とは限らない
ukabisは、需給マッチング、物流効率化、トレーサビリティなどを実現するための情報基盤です。実際の改善効果は、連携するデータ、参加事業者、既存システム、業務工程、利用するアプリケーションなどによって変わります。
導入の有無だけで効果を判断することはできません。
ukabisの名前の由来
「ukabis」は既存の英単語や略称ではなく、公式サイトによれば、五穀豊穣の神である宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)と、豊漁の神として知られる恵比寿天(えびすてん)にあやかって付けられた名称です。
食の生産から流通・消費、資源循環などに関わる人や情報をつなぎ、新しい価値を生み出す基盤を目指す考えが名称に込められています。
ukabisの参考動画
ukabisは複数の事業者・システム間で情報を連携する仕組みのため、文章だけでは全体像を把握しにくい概念です。
ukabis公式サイトに掲載されている紹介動画が参考になります。
ukabis movie(公式紹介動画)
スマートフードチェーンプラットフォーム ukabis
動画について:
この動画は、スマートフードチェーンプラットフォームukabisの仕組みや考え方を理解するための参考資料として紹介しています。農材ドットコムが制作・管理している動画ではありません。動画の内容、公開状況、URLなどは公開元の都合により変更または削除される場合があります。また、ukabisで実際に利用できる機能や連携サービス、利用条件などは変更される可能性があるため、導入やシステム連携を検討する場合は最新の公式情報を確認してください。
関連する資材分類・農業用語
参考資料
- スマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis」公式サイト
- 農研機構「スマートフードチェーンプラットフォームが実現する社会課題解決と新たな事業機会」
- 農林水産省「スマート農業-農業データの利活用の推進」
- 農林水産省「JASの対象となる品目(規格)-フードチェーン情報公表農産物」
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