トレーサビリティ・生産履歴とは
トレーサビリティとは、農産物や食品について、生産・加工・流通などの各段階で対象を識別し、入荷先や出荷先などの記録を残すことで、必要な場合にその移動経路を追跡できるようにする仕組みです。
一方、生産履歴とは、農産物を「いつ・どこで・どのように生産したか」を示す記録です。
作付、品種、農薬・肥料、農作業、収穫などの記録が含まれ、トレーサビリティを構成する重要な情報になりますが、トレーサビリティそのものと同じ意味ではありません。
トレーサビリティで重要なこと
農業におけるトレーサビリティでは、単に作業日誌を残すだけでなく、農産物や資材を識別し、それぞれの記録を対応付ける必要があります。
- 種苗、農薬、肥料等の入荷先と入荷内容を記録する
- 栽培している作物や区画を識別する
- 収穫した農産物を収穫日や圃場、ロット等で識別する
- 必要に応じて栽培ロットと収穫ロットを対応付ける
- 調製・選別した農産物についてロットを識別する
- 出荷日、出荷数量、出荷先等を記録する
- 問題発生時に対象となる農産物の範囲を追跡できるよう記録を保存する
生産履歴に記録される主な情報
生産履歴には、作物や取引先の要求事項によって、圃場・施設、作物・品種、播種・定植日、農薬使用、肥料使用、その他の栽培作業、収穫日、収穫量などが記録されます。
農薬の使用については、使用した農薬名、使用日、対象作物、使用量や希釈倍率など、適正使用を確認するために必要な情報を正確に記録することが重要です。
生産履歴とトレーサビリティの違い
例えば、トマトについて一年間の農薬・肥料・作業記録を詳細に保存していても、出荷した箱が「どのハウス・どの収穫日・どの記録に対応するものか」を特定できなければ、問題発生時に対象範囲を絞り込めない場合があります。
逆に、収穫ロットと出荷先を適切に対応付けておけば、問題が発生した際に対象となる農産物や出荷先を絞り込むことができます。
この「識別」と「記録の対応付け」が、単なる栽培記録とトレーサビリティを分ける重要な点です。
QRコードやICタグとの関係
QRコード、バーコード、RFID・ICタグなどは、農産物やロットを識別したり、記録入力を効率化したりするために利用できます。
ただし、これらの機器を導入しただけでトレーサビリティが成立するわけではありません。
重要なのは、何を識別するのかを決め、その識別情報と入荷・栽培・収穫・出荷などの記録が正しく対応付けられていることです。
紙の帳票でも、必要な識別と記録が継続して管理されていればトレーサビリティを構築できます。
栽培管理システムとの関係
クラウド型の栽培管理・生産管理システムを利用すると、作業記録や農薬・肥料、収穫、出荷などの情報を一元管理しやすくなります。
ただし、システムを導入しただけでトレーサビリティが完成するわけではありません。
実際の農場で使用する圃場・作付・収穫・出荷などの管理単位を決め、それぞれの記録をどのように対応付けるかを設計する必要があります。
よくある誤解
「栽培履歴を公開すればトレーサビリティになる」
消費者への栽培情報の公開と、問題発生時に農産物の移動経路を追跡できることは別の機能です。
「QRコードを貼ればトレーサビリティになる」
QRコードは識別や情報参照の手段です。コードと実際のロット、栽培記録、出荷記録が対応付けられていなければ追跡はできません。
「生産管理ソフトを導入すれば自動的にトレーサビリティが完成する」
ソフトウェアは記録を効率化する手段です。ロットの設定方法、記録項目、対応付け、現場での運用方法を別途設計する必要があります。
参考資料
食品トレーサビリティ「実践的なマニュアル」各論 農業編(農林水産省・PDF)
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