トマトキバガ(とまときばが)

トマトキバガ(とまときばが)
トマトキバガ

トマトキバガとは

トマトキバガ(とまときばが、学名:Tuta absoluta)とは、トマトやミニトマトを中心に、ナス科作物の葉や果実を加害する小型のガの仲間です。幼虫が葉の内部に潜り込んで白っぽい潜葉痕を作り、果実にも食入して品質低下や腐敗の原因になります。

農業現場で重要なのは、成虫の見た目よりも、葉の面的な潜葉被害、果実の小さな穿孔痕、被害葉・被害果の処分、登録農薬の確認、防虫ネットによる侵入抑制です。フェロモントラップは発生確認には役立ちますが、トラップを設置しただけで被害を止められるわけではありません。

トマトキバガの基本情報

トマトキバガは南アメリカ原産の外来害虫で、日本では2021年に初めて確認されました。その後、国内各地で確認されており、施設栽培・露地栽培のどちらでも警戒が必要です。特にトマト、ミニトマトでは、葉の食害だけでなく果実への食入が問題になります。

成虫は小型で、日中は葉の間などに隠れ、主に夜間に活動します。幼虫は葉、新芽、茎葉、果実に食入し、葉では白色から褐色の潜葉痕、果実では小さな穴や腐敗を生じさせます。多化性で、温度などの条件が合うと世代交代が早く、発見が遅れると短期間で被害が広がるおそれがあります。

トマトキバガの成虫トマトキバガの成虫

被害の症状

  • 葉の被害:幼虫が葉の内部を食べ、白っぽい薄皮状または褐変した潜葉痕が出ます。ハモグリバエ類のような細い線状の食害ではなく、面状に広がることがあります。
  • 果実の被害:幼虫が果実内に食入し、表面に小さな穿孔痕ができます。食害部から腐敗が進むことがあり、商品価値を大きく下げます。
  • 新芽・茎葉の被害:若い部分が食害されると、生育停滞や着果への影響につながる場合があります。

見分け方の注意点

トマトキバガは、見た目だけで断定しにくい害虫です。成虫はジャガイモガなど近縁種と似ており、外観だけでは識別困難な場合があります。現場では、成虫だけで判断せず、葉の潜葉痕、果実の穿孔痕、幼虫の有無、発生時期、フェロモントラップの誘殺状況、地域の発生情報を組み合わせて判断します。

特にハモグリバエ類との混同に注意が必要です。ハモグリバエ類は線状の潜孔痕が目立つ一方、トマトキバガでは面状の潜葉被害が目立つことがあります。ただし、被害痕だけで完全に断定できない場合もあるため、疑わしい場合は病害虫防除所や普及指導機関に確認することが安全です。

防除の基本

トマトキバガ対策は、単独の農薬やトラップだけで完結させるものではありません。発生確認、侵入防止、被害部位の処分、登録農薬の適正使用を組み合わせた総合防除として考える必要があります。

1. フェロモントラップで発生を確認する

フェロモントラップは、成虫の発生確認や発生時期の把握に役立ちます。ただし、主に雄成虫の誘殺を確認する資材であり、設置しただけで幼虫被害や果実食入を防げるわけではありません。誘殺数が少なくても、葉や果実の被害確認は継続する必要があります。

2. 施設では防虫ネットと隙間対策を行う

施設栽培では、ハウスの開口部に0.4mm目合い程度の防虫ネットを設置し、成虫の侵入を抑えることが推奨されています。ただし、防虫ネットは目合いだけでなく、サイド、妻面、出入口、換気部、巻き上げ部の隙間対策が重要です。隙間が残っていれば、ネットの性能は十分に発揮されません。

0.4mm目合いのネットは換気性を下げる場合があるため、高温期の施設では温度上昇、換気量、作物へのストレスも同時に確認します。防虫ネットを張ればすべて解決する、という説明は危険です。

3. 被害葉・被害果・残さを処分する

被害葉や被害果をほ場やハウス周辺に放置すると、内部に残った幼虫や蛹が次の発生源になるおそれがあります。被害部位や栽培残さは、土中に深く埋める、またはビニール袋などに密封して死滅させたうえで処分します。収穫終了後の残さ管理を軽視すると、次作に被害を持ち越す危険があります。

4. 登録農薬を最新情報で確認する

農薬を使用する場合は、必ず最新の農薬登録情報で、作物名、適用病害虫名、使用時期、希釈倍数、使用回数、収穫前日数を確認します。トマトに登録があっても、ミニトマトに同じ条件で使えるとは限りません。また、同じ有効成分を含む農薬の総使用回数にも注意が必要です。

薬剤抵抗性を避けるため、同じ系統の農薬を連用せず、IRACコードなど作用機構の異なる薬剤でローテーションを組むことが基本です。成虫だけを狙う、被害が進んでから同じ薬剤を繰り返す、といった対応は失敗しやすくなります。

5. 天敵・生物的防除は条件を確認して使う

タバコカスミカメなどの天敵利用は、IPMの一要素として検討されることがあります。ただし、天敵は放せば必ず効く資材ではありません。作型、温度、農薬履歴、餌資源、コナジラミ類など他害虫との混発、天敵に影響する薬剤の使用履歴によって成否が変わります。一般的な防除説明で「天敵が有効」と断定するのは不適切です。

越冬について

トマトキバガは、卵、蛹、成虫で越冬する報告があります。ただし、実際にどの地域・どの施設・どの作型でどの程度越冬し、次作の発生源になるかは条件次第です。暖房施設、残さの残存、野良生えトマト、ナス科雑草、ハウス周辺の管理状態によってリスクは変わります。

「寒い地域だから関係ない」「冬に一度作を切れば問題ない」と決めつけるのは危険です。作終了後の残さ処理、施設内外のナス科雑草管理、次作前の見回りをセットで行います。

現場で誤解されやすい点

  • トラップを置けば防除できるという誤解:フェロモントラップは主に発生確認用です。被害葉・被害果の処分や農薬防除を省く理由にはなりません。
  • 成虫を見ないから発生していないという誤解:成虫は小さく、日中は見つけにくい害虫です。葉の潜葉痕や果実の穿孔痕を確認する必要があります。
  • ハモグリバエ類と同じ対策でよいという誤解:被害痕が似る場合がありますが、トマトキバガは果実食入が問題になります。見分けと防除判断を混同しないことが重要です。
  • トマト用農薬ならミニトマトにも使えるという誤解:作物名が異なる場合があります。必ず最新の登録内容を確認します。
  • 天敵だけで抑えられるという誤解:天敵は条件が合えば有効な場合がありますが、単独対策として過信すると被害拡大を招きます。

よくある質問

トマトキバガは人に害がありますか?

トマトキバガ自体は人畜に無害とされています。ただし、食害された果実は腐敗や品質低下が起こるため、出荷・販売上は大きな問題になります。

トマトキバガとハモグリバエ類はどう違いますか?

ハモグリバエ類では線状の潜孔痕が目立ちます。トマトキバガでは、葉の内部を面状に食害し、白っぽい薄皮状または褐変した被害が出ることがあります。ただし、被害痕だけで断定できない場合もあります。

フェロモントラップだけで防げますか?

防げません。フェロモントラップは主に発生確認や予察のための資材です。被害葉・被害果の処分、防虫ネット、登録農薬の適正使用、残さ管理と組み合わせる必要があります。

トマトキバガの農薬は何を使えばよいですか?

作物名がトマトかミニトマトかで登録内容が異なる場合があります。最新の農薬登録情報提供システムで、適用病害虫名がトマトキバガになっているか、使用時期、希釈倍数、使用回数、収穫前日数、IRACコードを確認してください。

ピーマンにも注意が必要ですか?

トウガラシ属などナス科作物は寄主植物として注意対象に含まれます。ただし、国内での被害確認状況や登録農薬の有無は作物ごとに異なります。トマトと同じ対策・同じ農薬がそのまま使えるとは判断できません。

参考資料

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