チュウゴクアミガサハゴロモ

チュウゴクアミガサハゴロモ
チュウゴクアミガサハゴロモは外来種の害虫。分布拡大や大量発生に注意。

チュウゴクアミガサハゴロモ(ちゅうごくあみがさはごろも)とは、カメムシ目ハゴロモ科に属する中国原産の外来性害虫で、果樹、茶、花き、植木類、庭木、街路樹など多くの植物に寄生する昆虫です。蛾やクモではなく、成虫・幼虫が植物の汁を吸い、成虫は細い枝に産卵して産卵痕を残します。

農業現場で最も重要なのは、白い綿状物をまとった幼虫、茶褐色の成虫、枝に残る白い産卵痕を早く見つけ、発生枝を切除・処分することです。現時点では、本虫そのものを対象にした登録農薬の扱いは必ず最新の農薬登録情報で確認する必要があり、薬剤だけで卵や大量発生を抑え込めると考えるのは危険です。

チュウゴクアミガサハゴロモの概要

  • 分類:カメムシ目(半翅目)ハゴロモ科の昆虫。蛾ではなく、クモでもありません。
  • 学名:Pochazia shantungensis。古い資料や一部の特殊報では Ricania shantungensis と表記される場合があります。
  • 英名:brown winged planthopper。
  • 来歴:中国原産の外来種。国内では大阪府で確認後、本州・四国・九州の各地で確認されています。
  • 主な寄主植物:カンキツ類、キウイフルーツ、ブルーベリー、オリーブ、リンゴ、モモ、カキ、ブドウ、クリ、ウメ、茶、宿根アスター、植木類、庭木、街路樹など。
  • 主な被害:吸汁、甘露によるすす病、果実や葉の汚れ、枝への産卵による枝先の枯死・枝折れ。
葉に止まるチュウゴクアミガサハゴロモの成虫。茶褐色の翅と三角形の白斑が見分けの手掛かりになる
葉に止まるチュウゴクアミガサハゴロモの成虫

見分け方:アミガサハゴロモとの違い

チュウゴクアミガサハゴロモは、在来種のアミガサハゴロモと混同されやすい昆虫です。ただし、アミガサハゴロモは同意語ではなく、別種です。現場では、成虫だけで即断せず、前翅の白斑、幼虫の体色、ろう物質の出方、産卵痕、発生植物を組み合わせて判断します。

観点 チュウゴクアミガサハゴロモ アミガサハゴロモ 現場判断
来歴 外来種 在来種 同意語にしない
成虫の翅 茶褐色〜鉄錆色。前翅前縁中央部に三角形の白斑 形態は似るが白紋や翅の印象が異なる 白斑だけでなく全体像も見る
幼虫 白色を基調に斑紋や黒点があり、白い糸状のろう物質をまといやすい 赤橙色を帯びる幼虫が比較対象になる 白い綿状物だけでカイガラムシと誤認しない
産卵痕 細枝に傷をつけ、白色綿状のろう物質で覆われた痕を残す 同様の痕が問題になる場合もあるが、被害状況は異なる 枝の切除・処分判断に直結

チュウゴクアミガサハゴロモ-外来種と在来種の見分け方(翅の模様)チュウゴクアミガサハゴロモ-外来種と在来種の見分け方(翅の模様)

チュウゴクアミガサハゴロモの生態

本種は不完全変態の昆虫で、卵、幼虫、成虫の順に発育します。国内では、枝に産み込まれた卵で越冬することが重要です。大阪府では年2化性が確認され、6〜7月および9〜12月に羽化することが示されていますが、地域や年の気温条件によって発生時期は変わるため、全国一律の日付で防除を決めるのは不適切です。

雌成虫は、直径10mm以下の新梢など細い枝を選び、産卵管で枝を傷つけて卵を産み込みます。卵は枝の表面に乗っているだけではなく、傷つけられた部位に産み込まれ、白い綿状のろう物質で覆われます。そのため、卵の対策は「表面を軽く洗う」よりも、産卵痕のある枝を切除し、適切に処分することが基本になります。

チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫

被害症状

  • 吸汁被害:成虫・幼虫が植物の汁を吸い、発生量が多いと樹勢低下の原因になります。
  • すす病:甘露にすす病が発生し、葉や果実の外観品質を落とします。
  • 産卵痕:産卵時に枝が傷つけられ、枝先の枯死や枝折れの原因になります。
  • 収量への影響:ブルーベリーやカンキツなどでは、新梢に産卵されると翌年の花芽や枝の維持に影響し、収穫量が減る可能性があります。

チュウゴクアミガサハゴロモ-吸汁とすす病誘発のメカニズムチュウゴクアミガサハゴロモ-吸汁とすす病誘発のメカニズム

チュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕チュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕

防除の考え方

チュウゴクアミガサハゴロモ対策では、卵越冬、幼虫期、成虫期、産卵期を分けて考える必要があります。すべてを「殺虫剤で駆除」とまとめると失敗します。

1. 産卵痕のある枝を切除する

冬〜早春は、白い綿状物が付着した枝や、産卵痕が疑われる細枝を確認します。発見した枝は切除し、圃場や庭の周辺に放置しないでください。放置枝は翌年の発生源になります。処分方法は、自治体の分別や地域の防除指導に従います。

2. 幼虫期に発生源を減らす

白い綿状物をまとった幼虫は、枝や葉裏に集まることがあります。小規模では捕殺、払い落とし後の回収、発生枝の除去が現実的です。水で落とすだけでは再付着や周辺移動の可能性があるため、単なる散水を防除と考えてはいけません。

3. 成虫期は産卵前の観察を強める

成虫は比較的大型で、飛翔により移動しますが、植物の人為的移動による分散も問題になります。苗木、枝条、剪定枝、庭木、街路樹、圃場周辺の生け垣を含めて点検します。果樹園だけを清潔にしても、周辺の庭木や公共樹から再侵入する場合があります。

4. 防虫ネットは用途を限定して考える

成虫の産卵加害を防ぐ目的では、防虫ネットが有効な場合があります。ただし、樹木全体を覆う設計、開口部、作業性、受粉、風害、コストを検討せずに導入すると失敗します。小苗、鉢物、育苗、限定した樹形では検討余地がありますが、成木果樹園全体への単純適用は条件次第です。

農薬・殺虫剤について

本虫に対する薬剤防除は、必ず最新の農薬登録情報を確認してください。登録のない作物・害虫・使用方法で農薬を使うことはできません。海外で効果が報告された成分や、他害虫向けの防除暦で効果が示唆された薬剤があっても、それを本虫対象の登録農薬として扱ってはいけません。

特に危険なのは、「カメムシに効く薬なら効く」「ハゴロモ類だから同じ薬でよい」「家庭用殺虫剤で果樹も処理できる」といった判断です。農産物を出荷する圃場では、作物名、適用病害虫、希釈倍数、使用時期、使用回数、収穫前日数を確認しなければなりません。

誤解されやすい点

  • 誤解1:アミガサハゴロモと同じ虫である
    違います。アミガサハゴロモは在来の近縁種で、チュウゴクアミガサハゴロモとは別種です。同意語として扱うと、同定と被害評価を誤ります。
  • 誤解2:白い綿状物があればカイガラムシである
    違います。チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫や産卵痕も白いろう物質を伴います。枝・葉・虫体の形を確認してください。
  • 誤解3:卵は薬剤で簡単に駆除できる
    危険です。卵は枝に産み込まれ、白いろう物質で覆われます。産卵痕のある枝を切除・処分する考え方が重要です。
  • 誤解4:黄色粘着板やライトで防除できる
    発生把握の補助にはなり得ますが、園地の防除効果を過信してはいけません。誘殺数の把握と密度低下は別問題です。
  • 誤解5:天敵で自然に抑えられる
    現時点で、農業現場における安定した天敵利用技術として断定するのは不適切です。天敵を理由に初期防除を遅らせるべきではありません。

よくある質問

Q:チュウゴクアミガサハゴロモは人に害がありますか?
A:人体への直接的な害を主問題とする害虫ではありません。農業上は、吸汁、すす病、産卵痕、枝枯れ、果実や葉の汚れが問題です。

Q:オスとメスの見分けは防除に必要ですか?
A:通常の現場防除では優先度は高くありません。雄は雌よりやや小さい傾向がありますが、雌雄判定よりも、発生時期、幼虫の有無、産卵痕の確認を優先してください。

Q:卵駆除はどうすればよいですか?
A:産卵痕のある枝を切除し、圃場周辺に放置しないことが基本です。枝に産み込まれているため、表面だけをこする、軽く洗う、薬剤だけで済ませるという考え方は危険です。

Q:農薬はありますか?
A:登録状況は変わるため、農林水産省の農薬登録情報提供システムで最新情報を確認してください。登録がない場合、他害虫用の農薬を本虫対象として使うことはできません。

Q:大量発生の原因は何ですか?
A:条件次第です。広食性、卵が付いた枝や苗木の移動、周辺の庭木・街路樹・公園樹からの再侵入、産卵枝の放置、発見遅れなどが重なると増えやすくなります。単一原因で説明するのは不正確です。

参照

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