ケブカトラカミキリ(けぶかとらかみきり)の概要
ケブカトラカミキリ(けぶかとらかみきり)は、主にイヌマキやナギなどの樹木に寄生し、幹や枝の樹皮下(じゅひか)に産卵した幼虫が形成層(けいせいそう)付近を食害(しょくがい)することで、樹勢(じゅせい)を低下させ、枝枯れや枯死を引き起こすカミキリムシ類の樹木害虫です。
野菜や果樹などの農作物を直接加害する圃場害虫ではなく、葉の黄化(おうか)を肥料不足や乾燥だけで説明できる生理障害でも、葉枯れ病などの病害でもありません。また、成虫が確認できた時点のみの対処で解決する害虫ではなく、幼虫が樹体内部で進行させる被害を前提に、被害木を残すか処分するかまで含めて判断する必要があります。
ケブカトラカミキリ(けぶかとらかみきり)の詳細説明
被害の中心は幼虫です。成虫は春から初夏にかけて樹幹から脱出し、交尾後に樹皮の下へ産卵します。卵は短期間でふ化し、幼虫は樹皮下の形成層付近を食害して、樹体内の水分や養分の移動を阻害します。形成層付近の食害は、樹木にとって導管(どうかん)・師管(しかん)の通路を断つ行為に近く、被害が進むと一部の枝枯れから全体枯死へと進行します。
発生は多くの地域で年1回程度とされ、幼虫は夏から秋にかけて樹皮下で加害が進みます。秋以降は樹体内で成虫に近い状態となり、樹内で越冬します。翌春、樹幹に直径数mm程度の脱出孔(だっしゅつこう)を開けて外へ出るため、春の脱出期は被害が「見える形」で現れ、周辺への拡散が始まる時期です。
被害樹種には偏りがあります。果菜類・葉菜類・水稲などの圃場害虫の延長で考えると判断を誤ります。現場では、生垣や庭木、農業施設周辺の防風垣として利用されるイヌマキで問題化しやすく、同じ場所で年をまたいで被害が蓄積します。
イヌマキの木にとまっているケブカトラカミキリ
ケブカトラカミキリ(けぶかとらかみきり)が現場で引き起こす影響
主な対象はイヌマキの生垣や植栽で、樹勢低下→枝枯れ→部分枯死または全体枯死が現実的に発生します。枯死木が残ると翌年の成虫脱出数が増え、被害が連鎖します。防風・目隠しとしての機能が失われると、施設内の風当たりや温度ムラ、近隣対応コストの増加にも波及します。
ケブカトラカミキリ(けぶかとらかみきり)の診断と判断基準
- 経過観察でよい状態
葉色不良があっても、脱出孔が確認できず、樹皮下の明確な食害痕が見当たらない段階。管理履歴(強剪定、施肥、水切れ、除草剤飛散)を点検し、進行速度を観察します。 - 対策が必要な状態
幹や太枝に直径数mmの脱出孔が確認できる、または樹皮下に形成層付近の食害痕が見られる段階。成虫脱出期が近い場合は、被害木の扱い(残すか処分するか)を含めて即断が必要です。 - 回復困難・更新判断が必要な状態
枝枯れが広範囲で、食害が幹を取り巻く状態や枯死木となっている段階。この状態では薬剤散布での回復は期待できません。
ケブカトラカミキリ(けぶかとらかみきり)の防除対策
- 管理による回避
強剪定や極端な乾湿、過不足施肥など、樹勢を急激に落とす管理を避けます。 - 物理的・環境的対策
幼虫期は薬剤が届きにくいため、被害木は成虫脱出期前に伐採し処分します。伐採材を現場に放置すると、内部の個体がそこで羽化・脱出し、同じ場所で再拡大します。 - 化学的対策(補助)
成虫脱出・活動期(春〜初夏)に樹幹・枝へ残効狙いで使用します。幼虫期の散布で帳尻を合わせようとしないことが重要です。
ケブカトラカミキリ(けぶかとらかみきり)に関する留意点と課題
- 黄化=肥料不足と決め打ちしない
外観だけで判断すると、内部被害を見逃し発生源を温存します。 - 成虫捕殺だけで終わらせない
成虫確認は「号砲」。被害木の扱いまで含めて動きます。 - 時期外れの薬剤散布で安心しない
効かない時期に回数を増やしても、被害は止まりません。







