APG分類とは
APG分類(えーぴーじーぶんるい)とは、Angiosperm Phylogeny Group(被子植物系統グループ)が提唱している、被子植物の系統関係を反映した分類体系です。
従来の植物分類では、花や葉、茎などの形態的な特徴が分類の重要な根拠とされてきました。APG分類では、こうした形態的情報に加え、DNAの塩基配列などから推定された系統関係を重視し、共通祖先から分岐した植物群ができるだけ自然なまとまりとなるよう、目や科の範囲を整理しています。
最初のAPG分類は1998年に公表され、その後APG II(2003年)、APG III(2009年)、APG IV(2016年)へと更新されました。2026年には最新版となるAPG Vが公表されています。
APG分類の対象:
APG分類が対象としているのは被子植物です。裸子植物、シダ植物、コケ植物などを含む「植物全体の分類体系」ではありません。
APG分類の考え方
APG分類では、植物の外見が似ているかどうかだけでなく、進化の過程でどのような共通祖先から分岐したのかという系統関係を重視します。
外見が似ている植物であっても、異なる系統で似た形質が独立して進化することがあります。反対に、外見が大きく異なっていても、DNAなどの解析によって近縁であることが示される場合があります。
このため、APG分類の普及によって、従来同じ科にまとめられていた植物が別の科へ移されたり、反対に複数の科が一つの科へまとめられたりしました。
ただし、APG分類は「DNAを解析すれば機械的に分類が決まる」というものではありません。APG Vでは核DNAや葉緑体DNAなど多数の遺伝子を用いた研究成果が検討されていますが、解析する遺伝子や手法によって系統樹が一致しない植物群もあります。
こうした不確実性が残る場合には、無理に位置を確定せず、未確定の系統として扱う場合があります。
最新版のAPG V
APG Vは2026年に公表されたAPG分類の最新版です。
APG IV以降に蓄積された大規模な核DNA・葉緑体DNAの系統解析を検討し、APG IVの基本構造の多くを維持しながら、一部の目や科、主要な系統群の範囲が見直されました。
- APG Vの公表年:2026年
- 認められている目:66目
- 認められている科:407科
APG Vでは、APG IVで採用されていた分類の大部分が核DNAと葉緑体DNAの双方から支持されていることが確認されています。
変更例として、Oncothecales(オンコテカ目)とCardiopteridales(カルディオプテリス目)が新たに認められました。また、バラ類の大きな系統群であるfabidsとmalvidsの範囲についても、大規模な核DNA解析を踏まえた見直しが行われています。
APG分類の更新履歴
- APG:1998年
- APG II:2003年
- APG III:2009年
- APG IV:2016年
- APG V:2026年
APG分類は、新しい研究成果が出るたびに無条件で分類を変更する仕組みではありません。近年のAPGでは、系統関係を反映すると同時に、分類を頻繁に変更することで研究・教育・園芸・植物データベースなどに混乱が生じないよう、分類体系の安定性も重視されています。
従来の植物分類との違い
APG分類の導入によって、従来の図鑑や学校教育で使われてきた科名と、現在の植物図鑑・植物園・学術資料で使われる科名が異なる場合があります。
代表的なのが、かつて広い意味で「ユリ科」とされていた植物です。
現在のAPG分類では、従来ユリ科として扱われていた植物のすべてをユリ科にまとめることはありません。例えば、ネギ属を含むグループはヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、アスパラガス属を含むグループはキジカクシ科(Asparagaceae)として扱われます。
このため、古い図鑑と新しい図鑑を比較すると、同じ植物でも科名が異なっていることがあります。
旧分類の科名が記載されているからといって、その資料自体が誤りとは限りません。植物名や科名を確認するときは、どの分類体系・どの版に基づいているのかを確認する必要があります。
「双子葉植物」とAPG分類
従来は、被子植物を単子葉植物と双子葉植物に大きく二分する説明が広く用いられてきました。
しかし、現在の系統分類では、従来「双子葉植物」と呼ばれていた植物全体は一つの共通祖先からなる単系統群とはみなされていません。
その中の大部分を占める単系統群は真正双子葉類(eudicots)と呼ばれます。真正双子葉類は従来の「双子葉植物」と完全に同じ範囲ではないため、両者を同義語として扱うのは不正確です。
農業・園芸でAPG分類を見るときの注意点
APG分類は、作物・花き・樹木などの系統関係を理解したり、植物図鑑、研究論文、植物園、標本資料などの科名を確認したりする際に役立ちます。
ただし、APG分類は栽培方法や病害虫防除方法を決めるための基準ではありません。
同じ科に属する植物であっても、生育特性、肥培管理、病害虫、農薬登録、耐寒性、環境適応性などが同じとは限りません。反対に、分類上の科が変更されたからといって、その植物の栽培特性そのものが変化するわけでもありません。
農業上の注意:
「同じ科だから同じ栽培管理ができる」「近縁だから同じ病害虫対策や農薬が使える」と判断することはできません。APG分類は植物の系統関係を整理する分類体系であり、栽培・防除上の適用判断とは分けて考える必要があります。
APG分類で誤解されやすい点
- APG分類は植物全体の分類ではありません。
対象は被子植物です。裸子植物やシダ植物には別の系統分類が用いられます。 - 「DNAだけで分類する方法」という説明では不十分です。
DNAを中心とする分子系統解析は重要な根拠ですが、複数の研究結果、形態的情報、分類体系の安定性なども考慮して体系が整理されています。 - 従来の科名がすべて誤りになったわけではありません。
採用する分類体系によって科の範囲が異なる場合があります。古い資料を利用する場合は分類体系を確認します。 - 双子葉植物と真正双子葉類は同じ意味ではありません。
真正双子葉類は、従来双子葉植物と呼ばれてきた植物のうち、系統的にまとまった大きなグループです。 - APG分類から栽培・防除方法を直接判断することはできません。
植物の近縁関係と、肥培管理、病害虫防除、農薬の適用範囲などは別に確認する必要があります。
関連する資材分類・農業用語
参考資料
- The Angiosperm Phylogeny Group「Large-scale nuclear and plastid phylogenomic analyses inform an updated Angiosperm Phylogeny Group classification: APG V」(2026)
- The Angiosperm Phylogeny Group「An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV」(2016)
- Royal Botanic Gardens, Kew「APG – classification by consensus」
- 国立科学博物館「シダ植物の新しい分類体系“PPG”の構築」
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