胚乳は種子内部にある栄養貯蔵組織で、発芽初期に胚へ養分を供給し、生育開始を支えます。
胚乳(はいにゅう)の概要
胚乳(はいにゅう)とは、被子植物の種子内部に形成される栄養貯蔵組織で、発芽初期に胚(はい)へ養分を供給するための構造です。葉・根・茎の一部ではなく、光合成を行う器官でもありません。肥料や栽培管理によって後から増やせるものではなく、種子形成時点でその量や性質が決まる内部組織です。なお、作物によっては成熟過程で胚乳が子葉に吸収され、成熟種子中に残らない場合もあります。
胚乳・子葉・胚の違い(簡易整理)
- 胚乳
被子植物の種子内に形成される栄養貯蔵組織。発芽初期に胚へ養分を供給する。成熟種子に残らない作物もある。 - 子葉
胚の一部として形成される器官。発芽後は養分吸収や光合成に関与するが、胚乳そのものではない。 - 胚
将来の植物本体となる部分。胚乳や子葉から養分を受け取り、初期生育を開始する主体である。
胚乳(はいにゅう)の詳細説明
胚乳は、被子植物に特有の組織で、受精の過程で形成される栄養貯蔵組織です。胚とは別系統で発達し、デンプン、タンパク質、脂質などを主要成分として蓄積します。発芽が始まると、酵素の作用によってこれらの貯蔵成分が分解され、可溶化した養分として胚に供給されます。
胚乳の量や性質は作物種によって大きく異なります。水稲・コムギ・トウモロコシなどの単子葉作物では、成熟種子の大部分を胚乳が占めます。一方、ダイズやインゲンなどの双子葉作物では、胚乳は種子成熟の過程で子葉に吸収され、成熟種子中に残らない場合があります。
胚乳は発芽初期に機能する組織であり、発芽後の生育を直接制御するものではありません。胚乳の充実度が低い種子では、発芽勢が弱くなり、出芽の遅れや初期生育のばらつきが生じやすくなりますが、これらは播種後の管理のみで完全に補正できるものではありません。
ココナッツの果肉(胚乳)
胚乳(はいにゅう)が圃場で引き起こす影響
胚乳の充実度は、発芽率や発芽揃いに影響し、その結果として初期根量や初期葉数の差として現れることがあります。胚乳が十分に形成されていない種子では、出芽が遅れ、生育初期に競争力を失う場合があります。ただし、胚乳の大小が最終的な収量や品質を単独で決定するわけではありません。
胚乳(はいにゅう)への対応と判断基準
- 発芽・出芽が概ね揃い、初期生育に大きなばらつきが見られない状態
→ 胚乳の充実度に起因する問題は小さく、通常管理で経過観察する。 - 発芽はするが初期生育が弱く、個体間差が大きい状態
→ 胚乳の個体差が影響している可能性があり、胚乳自体は改善できないため、間引きや補植による密度調整で対応する。 - 発芽不良や出芽遅延が顕著な状態
→ 胚乳の充実不足や種子品質の問題が疑われ、追肥や薬剤では回復しないため、播き直しや苗更新を検討する。
胚乳(はいにゅう)に関する留意点と課題
- 発芽不良を肥料不足と誤認する判断
対処方法:胚乳は種子形成時に決まる内部構造であり、播種後の施肥で改善できないことを前提に判断する。 - 初期生育不良を病害や薬害と誤認する判断
対処方法:発芽直後からの個体差や出芽揃いを確認し、症状の進行性や伝染性がない場合は胚乳や種子品質要因を疑う。







