卵菌(らんきん)

卵菌(らんきん)
卵菌(らんきん)由来の病害は葉濡れや過湿で広がりやすく、外観の黄化だけでは断定できません。根と環境も併せて確認します。

卵菌(らんきん)の概要

卵菌(らんきん)とは、植物の病害で「べと病」「疫病(えきびょう)」などを起こす病原体群として扱われることが多い、生物分類上は菌類(きんるい)とは系統が異なる原生生物系統の病原体群です。卵(たまご)に付く食中毒菌(しょくちゅうどくきん)(サルモネラ属菌など)ではなく、また肥料不足や水切れなどの生理障害(せいりしょうがい)そのものでもありません

圃場(ほじょう)では「卵菌かどうか」を決め打ちせず、発生条件(冷涼多湿・過湿など)と病徴(びょうちょう)の整合、可能な範囲での病原体確認にもとづいて、対策手段(耕種・環境・薬剤適用)を誤らないことが最重要です。

卵菌(らんきん)・菌類(きんるい)・細菌(さいきん)の違い(簡易整理)

  • 卵菌(らんきん)
    菌糸(きんし)状の体を作るため外観は菌類に似るが、分類学的には別系統で、遊走子(ゆうそうし)や卵胞子(らんほうし)などを形成する。「卵(たまご)の菌」や食中毒菌ではない
  • 菌類(きんるい)(糸状菌(しじょうきん)・酵母(こうぼ)など)
    多くはキチン質(しつ)を含む細胞壁(さいぼうへき)を持つ真菌(しんきん)。うどんこ病など卵菌とは別の病害群を含む。卵菌用の判断軸や薬剤選択をそのまま当てはめると外れる
  • 細菌(さいきん)(食中毒菌・植物病原細菌など)
    菌糸を作らない単細胞の微生物。卵のサルモネラ対策は食品衛生の領域であり、植物病害の「卵菌」とは対象も対策も別

卵菌(らんきん)の詳細説明

卵菌は、圃場では「病害の原因となる病原体群」として重要です。代表例として、べと病(作物ごとに病原が異なる)、疫病(フィトフトラ属など)、苗立枯病(なえたちがれびょう)・根腐病(ねぐされびょう)(ピシウム属など)が挙げられます。これらは、冷涼で葉が濡れる時間が長い条件、または土壌の過湿・排水不良などで発生リスクが上がる傾向があります。

卵菌は菌類に似た菌糸状の生育を示しますが、現場で重要なのは「分類の暗記」よりも、感染が成立しやすい環境と、症状が現れやすい部位・進行の仕方を組み合わせて捉えることです。たとえば葉の病害では、葉裏(はうら)に灰白色(かいはくしょく)の菌叢(きんそう)が出やすい、夜露や雨が続いた後に急に広がる、株間の風通しが悪い場所から進む、などの傾向が診断の手がかりになります。ただし、これらの所見が単独で確認できない場合も多く、葉が黄化(おうか)するという外観だけで卵菌と断定すると、肥料要因・根傷み・ウイルス要因などを見落とします。

土壌由来の卵菌(ピシウム、フィトフトラなど)では、過湿で根が弱った株から急にしおれる、地際(じぎわ)が水浸状(みずびたしじょう)に変色する、根が褐変(かっぺん)して生育回復が難しくなる場合があるなどが問題になります。ただし、同じ「根が黒い」「しおれる」でも、乾燥・塩類集積(えんるいしゅうせき)・酸素不足・低温障害などの生理要因で同様の症状が起こり得ます。したがって、卵菌を疑う場合でも、土壌水分、排水、根の状態、発生の広がり方を同時に点検する必要があります。

キュウリべと病は卵菌が原因の病害キュウリべと病は卵菌が原因の病害で、肥料不足ではありません。葉裏の菌叢確認が重要。

卵菌(らんきん)が圃場(ほじょう)で引き起こす影響

卵菌が関与する病害は、葉・茎・果実・根のいずれにも発生し得ます。葉では光合成(こうごうせい)能力の低下や落葉(らくよう)により収量・品質が低下し、果菜類では果実肥大(ひだい)や糖度(とうど)に影響します。根や地際の病害では吸水・吸肥(きゅうひ)が阻害され、しおれや生育停滞が進みます。これらの影響が軽度であれば回復が見込める場合もありますが、進行すると回復が難しくなり、作り直し(更新)を検討すべき状態に至る場合があります

卵菌(らんきん)の診断と判断基準

  • 経過観察でよい状態
    黄化など外観変化が軽微で、葉裏の菌叢や病斑(びょうはん)の拡大が確認できず、発生条件(葉濡れ・冷涼多湿・過湿など)とも一致しない状態。まず環境条件と施肥・灌水(かんすい)履歴を点検し、症状の推移を観察する。
  • 対策が必要な状態
    葉裏の菌叢、病斑の拡大、株間での広がりが確認でき、発生条件とも整合する状態。換気(かんき)・除湿(じょしつ)・株間調整・葉濡れ時間の短縮・排水改善などの耕種・環境対策を優先し、それでも進行が抑えられない場合に限り、卵菌に適用のある薬剤を補助的に用いる。ただし卵菌と菌類では薬剤の作用点が異なるため、「カビ病用」といった一般化で選ばない
  • 回復困難・更新判断が必要な状態
    根部の腐敗(ふはい)が進み、吸水回復が見込めない、地際の病変が拡大して株が維持できない、圃場内で多発し再感染条件が続く状態。株の隔離・抜き取り、残渣(ざんさ)管理、排水・作期・資材(培地更新など)を含む再発抑制へ切り替える。

卵菌(らんきん)に関する留意点と課題

  • 典型的な誤判断①:「黄化=肥料不足」だけで決める
    なぜ誤りか:卵菌が関与する病害でも黄化は起こり得るが、肥料要因でも同様に起こるため、外観だけで判断すると誤診につながる
    対処方法:葉裏の菌叢・病斑の形、発生条件(葉濡れ・冷涼多湿)の一致を確認し、根・灌水・施肥履歴も同時に点検する。
  • 典型的な誤判断②:「白いカビ=全部同じ薬で止まる」と考える
    なぜ誤りか:卵菌と菌類は系統が異なり、薬剤の効き方(作用点)が異なるため、一般化すると防除が成立しない
    対処方法:病名(作物名+病害名)と適用条件を基準にし、卵菌対象の適用が明確な薬剤に限定して選定する。薬剤は環境改善の代替ではない。
  • 典型的な誤判断③:「卵菌=卵(たまご)の食中毒菌」と混同する
    なぜ誤りか:対象(植物病害と食品衛生)が別で、対策も別系統である。混同は不要な不安や誤対応につながる。
    対処方法:卵菌は植物病害の病原体群、サルモネラなどは食品の細菌として切り分け、話題と対策を混線させない。
  • 典型的な誤判断④:環境が悪いまま薬剤だけで解決しようとする
    なぜ誤りか:葉濡れ時間、換気不足、過湿・排水不良が続けば再感染が起こり、効果が不安定になる。
    対処方法:結露(けつろ)抑制、換気、灌水量とタイミング、排水を先に是正し、薬剤は条件を整えた上で補助として扱う。
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