発生予察器具とは
発生予察器具とは、農作物を加害する害虫の発生時期、発生量、発生消長などを調査し、防除の要否や適切な防除時期を判断するために使用する調査資材・機器です。
代表的なものには、性フェロモンなどの誘引物質を利用するフェロモントラップ、昆虫の走光性を利用する予察灯、色に対する誘引性を利用する粘着トラップなどがあります。
発生予察器具で捕獲した害虫数は、そのまま圃場内の害虫密度を表すものではありません。
捕獲数の推移、作物上の害虫数や被害状況、気象条件、都道府県病害虫防除所などが発表する発生予察情報を併せて、防除の必要性や時期を判断することが重要です。
発生予察と害虫防除は目的が異なる
発生予察の目的は、害虫を大量に捕獲して被害を直接減らすことではなく、発生状況を把握することです。
特に「発生予察用」として供給されている性フェロモン剤は、調査・研究目的の資材であり、防除目的で使用するものではありません。
大量誘殺や交信かく乱を目的とした農薬登録のあるフェロモン製剤とは区別して使用してください。
同じ「フェロモン」という言葉が使われていても、発生予察用フェロモン剤と、交信かく乱剤・大量誘殺用製剤では目的や使用方法が異なります。
購入・使用時には製品の用途を必ず確認してください。
フェロモントラップによる発生予察
フェロモントラップは、特定の害虫が仲間を探す際に利用する性フェロモンなどを人工的に再現した誘引剤と、捕獲用トラップを組み合わせて使用します。
性フェロモンには種特異性が高いものが多く、予察灯のように多数の昆虫が混在して捕獲される方法と比べ、目的とする害虫を効率的に調査しやすいことが特徴です。
オオタバコガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、コナガ、ヨトウガ、モモシンクイガなど、多くの農業害虫について発生予察用フェロモン剤が利用されています。
ただし、フェロモントラップにも標的害虫以外の近縁種などが混入する場合があります。
捕獲された昆虫を害虫名だけで決めつけず、必要に応じて形態を確認して同定してください。
フェロモントラップの設置条件にも注意
フェロモントラップの捕獲数は、誘引剤だけでなく、トラップの種類、設置高さ、風向き、周囲の地形、作物の草丈、交換時期などによって変わります。
同じ圃場の発生消長を比較する場合は、調査期間中に設置位置や高さ、トラップ形式、誘引剤の交換間隔などを不用意に変更しないことが重要です。
条件が変わると、捕獲数の変化が害虫発生量の変化によるものか、調査条件によるものか判断できなくなります。
また、複数種類のフェロモントラップを近接して設置すると誘引を妨げる場合があります。
夜間照明によって雄成虫の行動が影響を受ける場合もあるため、使用する製品の設置条件を確認してください。
予察灯による発生予察
予察灯は、夜間に光へ飛来する昆虫の性質(走光性)を利用して害虫を捕獲し、その種類と個体数を調査する装置です。
水稲、果樹、茶などの害虫発生調査で長く利用されています。
フェロモントラップとは異なり、多種類の昆虫が誘引されるため、捕獲後に対象害虫を識別・計数する必要があります。
一方、特定のフェロモン剤が用意されていない害虫を含め、複数の飛翔性昆虫を継続的に調査できる利点があります。
予察灯には、捕獲された昆虫を日ごとに分けて回収できる装置もあり、発生ピークを把握するために利用されています。
色彩粘着トラップによる発生調査
黄色や青色などへの害虫の誘引性を利用した粘着シートも、施設園芸での発生調査に利用されています。
黄色粘着トラップはコナジラミ類やアブラムシ類など、青色粘着トラップはアザミウマ類などのモニタリングに利用されます。
ただし、粘着シートは発生予察だけでなく大量捕殺を目的として設置される場合もあるため、調査目的と防除目的を区別してください。
捕獲数だけで防除時期を決めない
トラップで害虫が捕獲されたことは、その害虫が周辺に存在していることを示す重要な情報ですが、「1頭捕れたら農薬散布」「○頭以上なら必ず防除」と一律に判断することはできません。
要防除水準や防除適期は、作物、害虫、地域、作型、生育段階などによって異なります。
圃場内の見取り調査、被害状況、気象条件、地域の発生予察情報などを併せて判断してください。
農林水産省や都道府県の病害虫防除所では、各種トラップによる調査結果や気象・作物生育情報などをもとに、病害虫発生予報、注意報、警報、特殊報などを発表しています。
圃場でのモニタリングと併せて確認することをおすすめします。
発生予察器具取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 方式 | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|---|
| 東海物産株式会社 | ルアートラップF | フェロモントラップ | 性フェロモンルアーと組み合わせて使用する発生予察・密度調査用トラップ。ハスモンヨトウ、オオタバコガ、ヤシオオオサゾウムシ用を設定 |
| 富士フレーバー株式会社 | ニューウインズパック | フェロモン・誘引トラップ | コガネムシ類を対象としたモニタリング用フェロモントラップ。対象種に応じたルアーと専用トラップを組み合わせるリユース型発生予察資材 |
| 住友化学株式会社 | 住化式乾式トラップ | 乾式フェロモントラップ | フェロモン剤と組み合わせて雄成虫を捕獲するフェロモン用捕虫器。害虫の発生調査などに利用 |
| 協友アグリ株式会社 | ファネル型トラップ | ファネル型フェロモントラップ | フェロモン剤と組み合わせて使用。砂塵やほこりの多い場所でも使用しやすく、捕獲虫の回収・洗浄が可能 |
| 株式会社池田理化 | 乾式予察灯 MT-7-N | 予察灯 | 光で誘引した害虫を捕獲し、7個のケージで日ごとに分けて回収可能。水稲・野菜・果樹などの害虫発生調査向け |
発生予察用フェロモン資材について
発生予察用フェロモン剤や各種トラップは、日本植物防疫協会などを通じて供給されているものがあります。
対象害虫ごとに使用する誘引剤やトラップ形式が異なるため、対象害虫を確認して選定してください。
発生予察用として供給されている資材は、防除目的で使用できないものがあります。
「フェロモンだから防除にも使える」と自己判断せず、製品の用途や使用条件を確認してください。