農業用ビニール(農ビ)

農業用ビニール(農ビ)

農業用ビニール(農ビ)とは

農業用ビニール(農ビ)とは、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を主原料とし、
可塑剤を配合して柔軟性を持たせた農業用の軟質フィルムです。
主にビニールハウスの外張り・内張り・カーテン、
サイド換気部、トンネル栽培などの
被覆資材として使用されます。

一般に「ビニールハウス」と呼ばれる施設でも、現在の被覆材が農ビとは限りません。
農PO(農業用ポリオレフィンフィルム)、硬質フィルム、硬質板なども使われています。
「ビニールハウス=農ビ」ではありません。

農ビには一般的な透明タイプのほか、防塵、
防霧、
防滴・流滴、
梨地・散乱光、紫外線カット(UVカット)、保温強化、糸入りなど、
用途に応じた機能を備えた製品があります。
同じ農ビでも、機能の組み合わせや性能は製品ごとに異なります。

農ビの代表的な特徴は、柔軟性がありハウス形状になじませやすいことです。
保温性を重視した製品も多く利用されています。
農ビ特有のベタつきが施工や巻き上げ作業の妨げになる場合がありますが、
現在は表面処理や配合によってベタつき、汚れの付着を抑えた製品もあります。

農ビと農POの普及状況

農林水産省「園芸用施設の設置等の状況」では、
2023年11月から2024年10月までの園芸用施設について、
被覆資材別構成比はポリオレフィンフィルム53.5%、
塩化ビニルフィルム32.6%となっています。
ガラス室は4.2%、硬質プラスチックフィルムは5.0%、その他は4.7%です。

この統計では、1つの施設に複数の被覆資材が使われている場合、
屋根または屋根に相当する部分の被覆資材によって分類されています。
サイド、内張り、カーテンなどを含めた農ビ使用量の割合を示す数字ではありません。

現在は農POの比率が農ビを上回っていますが、普及率だけで被覆材の優劣は決まりません。
作物、地域、使用部位、使用予定期間、施工方法、
光学特性、保温性能などを製品単位で比較します。

農ビの機能と混同しやすい性能

防霧と防滴・流滴は別の機能

防霧は、施設内に浮遊する霧・もやの発生を抑えるための機能です。
防滴・流滴は、
フィルム内面に生じた結露水を細かな水滴として残りにくくし、
フィルム面に沿って流れやすくする機能です。
メーカーや製品によって「無滴」「流滴」などの名称も使われます。

防滴は「結露しない」という意味ではありません。
施設内の水蒸気量やフィルム表面温度などの条件によっては結露します。
防滴性能があっても、水受け部やフィルムのたるみなどに水が集まれば、
作物上へ落下する場合があります。

透明性だけで被覆材を選ばない

光線透過率が高いことだけを理由に農ビを選ぶのは適切ではありません。
透明性、散乱光特性、紫外線透過特性、保温性、防滴性、防霧性、
防塵性、耐候性などを、作物と作型に合わせて確認します。

同じ日射量でも、
直達光と散乱光の割合や波長特性が異なれば、
葉群内の光環境や作物への影響も同じではありません。

UVカット農ビは作物と花粉交配用昆虫を確認する

UVカット農ビでは、紫外線域の透過を抑えることで、
一部の害虫や病害の発生・活動を抑制する目的の製品があります。
農薬の代わりになる機能ではありません。

紫外線は作物の着色や生育、昆虫の行動にも関係します。
製品によってはナスなど特定作物や、
ミツバチを利用する栽培への使用を制限しているものがあります。

マルハナバチについても「UVカット農ビなら使用できる」「使用できない」と
一律には判断できません。
フィルムの分光特性、ハチの種類・個体差、施設構造、気象条件、
農薬の影響などで飛翔行動が変わる可能性があります。
フィルムメーカーと花粉交配用昆虫の供給元の両方で使用条件を確認してください。

農業用ビニール(農ビ)の規格

農ビには、用途に応じてさまざまな厚さ・幅・長さがあります。
メーカーの標準規格では幅135~400cm、長さ100m程度の製品が多く見られますが、
すべての農ビに共通する規格ではありません。
400cmを超える幅や長尺品に対応する製品もあります。

外張りでは、施設の間口・奥行きや展張方法に合わせて加工し、
農業資材販売店やJAなどから納入される場合があります。
厚さが大きいほど必ず長寿命になるとは限りません。
製品の用途、耐候設計、施工条件を確認します。

農業用フィルムを展張した連棟ハウス
ビニールハウス(連棟ハウス)

農業用ビニール(農ビ)の種類

農ビを選ぶときの確認項目

  • 使用部位:外張り、内張り、カーテン、サイド換気、谷部、トンネルなど。
  • 使用予定期間:メーカーが想定する用途と耐候性を確認する。
  • 光の特性:透明、散乱光、UVカットなど。全光線透過率だけでは判断しない。
  • 保温性能:冬期加温や夜間保温を重視する場合は製品ごとの性能を比較する。
  • 結露対策:防滴・流滴性、防霧性と、その持続性を確認する。
  • 開閉の有無:サイドや谷部では、ベタつきや巻き上げ適性も確認する。
  • 作物・受粉方法:UVカット品では作物適性と花粉交配用昆虫の使用条件を確認する。
  • 施工条件:表裏、展張方向、固定方法、適用部位をメーカー資料で確認する。

農業用ビニール(農ビ)の使用上の注意点

農ビの使用可能期間は、製品、厚さ、使用部位、地域の気象条件、
ハウス構造、展張方法、フィルムに加わる摩擦や張力などによって変わります。
「農ビだから何年間使える」と素材名だけで耐用年数を決めることはできません。

農ビには表裏や展張方向が指定されている製品があります。
防塵、防滴などの表面処理を正常に機能させるには、
施工前に製品表示とメーカーの施工条件を確認します。

サイド巻き上げ部では、フィルム同士のベタつきだけでなく、
ハウスパイプ、フィルム止め部材、巻取り軸などとの摩擦や擦れも劣化原因になります。
外張り用、内張り用、サイド用を用途だけでなく製品指定まで確認してください。

使用済み農ビの処理

農業生産に伴って排出される使用済み農ビは、
農業由来の廃プラスチックとして産業廃棄物に該当します。
農業生産者は排出事業者として適正に処理する必要があります。

回収・リサイクルでは素材ごとの分別が重要です。
農ビ(塩化ビニルフィルム)と農PO・農ポリなどのポリオレフィン系フィルムを混ぜず、
土砂、植物残渣、金属などの異物をできるだけ除去し、
地域の農業用廃プラスチック回収・処理方法に従ってください。

使用済み農ビを野焼きしてはいけません。

農ビと農POの違い

農ビはポリ塩化ビニル(PVC)を主原料とした軟質フィルムで、
柔軟性があり施設形状になじませやすいこと、
保温性を重視した製品が多いことが代表的な特徴です。

農POはポリオレフィン系樹脂を用いた農業用フィルムです。
農ビより軽量で、ベタつきや汚れが生じにくい製品が多く、
広幅製品や中・長期展張用製品も多数あります。

耐久性、保温性、透明性、散乱光性、防滴性、紫外線透過特性、
施工性、価格は素材区分だけでは決まりません。
「農POの方が常に高性能」「農ビの方が必ず安価」という判断は誤りです。
製品仕様と使用条件を比較してください。

農PO(農業用ポリオレフィンフィルム)の詳しい説明はこちら

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