花粉・花粉増量剤

花粉・花粉増量剤

花粉・花粉増量剤とは

人工授粉用の花粉は、
果樹などの人工授粉で、
雌しべの柱頭へ付着させるために使用する
花粉です。
ナシ、リンゴ、キウイフルーツ、モモ、スモモ、サクランボなどで、
受粉を補助して安定した結実につなげる目的で利用されます。

花粉増量剤は、
人工授粉用花粉に混合し、
少量の花粉を均一に扱いやすくしたり、
散粉時の流動性を確保したりするための資材です。
代表的なものに、ヒカゲノカズラ類の胞子を利用した
石松子(せきしょうし)があります。

花粉増量剤を混ぜても、発芽能力を持つ花粉粒の数が増えるわけではありません。
混合倍率を高くしすぎれば、花へ到達する有効花粉量が不足して
受精・結実に影響する可能性があります。

粗花粉と純花粉

人工授粉用花粉では、
粗花粉と純花粉を区別して扱うことがあります。

粗花粉は、花粉のほかに
葯や花糸などの夾雑物を含んだ状態です。
純花粉は、粗花粉を花粉精選機などで処理し、
夾雑物を除いて花粉を主体とした状態にしたものです。

両者では花粉濃度が異なるため、
同じ「○倍希釈」という数字でも意味が同じとは限りません。
重量比か容量比かについても確認が必要です。

花粉増量剤の役割

石松子などの粉末状増量剤は、
花粉と混合して使用することで、
少量の花粉を扱いやすい量に増やし、
手作業や授粉機による散粉をしやすくします。

染色した増量剤では、
授粉作業を行った場所を確認しやすくする目的を兼ねる製品もあります。
製品によって原料、粒径、流動性、色、推奨混合倍率が異なります。

増量剤そのものに受精能力はありません。
結実を左右するのは、有効な花粉が適切な量で柱頭へ到達し、
その後に発芽・花粉管伸長・受精まで進めるかどうかです。

希釈倍率は固定値で決めない

花粉と増量剤の混合倍率は、
作物、品種、花粉の発芽率、粗花粉・純花粉の別、
授粉方法、使用する機器などで変わります。

農林水産省もナシやリンゴの花粉節約対策として、
花粉の発芽率を確認したうえで希釈倍率を調整する方法を示しています。
「石松子なら常に○倍」と一律に決めるのは不適切です。
対象作物の技術資料、産地の指導基準、花粉・増量剤メーカーの使用条件を確認してください。

花粉は品種名だけで選ばない

果樹では、同じ作物の花粉なら何でも使用できるわけではありません。
ナシやリンゴなどには
自分自身や遺伝的に不和合な組み合わせの花粉では
受精しにくい品種があります。

購入時には、
対象作物、花粉品種・系統、受粉させる品種との和合性、
花粉の発芽能力、採取・調製条件、保管条件

を確認します。

花粉の「量」が十分でも、発芽能力が低下していれば
期待した結実にはつながりません。

花粉の保管と使用前の取り扱い

花粉は温度や水分条件の影響を受け、
不適切な保存によって発芽能力が低下します。

市販花粉では冷凍保管を指定する製品もありますが、
適切な保存温度、解凍方法、吸湿・馴化方法は製品ごとに異なります。
保存方法を一律に決めず、購入した花粉の指定条件に従ってください。

冷凍・低温保管した花粉を使用するときも、
急激な結露や吸湿を避けるため、
メーカーが指定する手順で使用状態へ戻します。

粉末授粉と溶液授粉は別に考える

石松子などと花粉を混合して散布する粉末授粉のほか、
花粉を専用の液体へ分散させて散布する溶液授粉もあります。

溶液授粉は、花粉を水へ混ぜるだけの方法ではありません。
花粉の発芽能力を維持できる専用液や濃度、
調製後の使用可能時間などの条件があります。
使用する製品・技術の指定方法に従います。

輸入花粉では産地と植物検疫を確認する

果樹花粉は植物病原菌を持ち込む経路になり得るため、
輸入花粉には植物検疫上の条件があります。

中国で火傷病が確認されたことを受け、
日本では2023年8月から中国産の火傷病菌宿主植物について、
ナシ・リンゴなどの花粉を含む輸入停止措置が取られています。
キウイフルーツの花粉についても、
産地によってキウイフルーツかいよう病菌(Psa3)に関する
検疫条件があります。

出所や検疫状況を確認できない輸入花粉は使用しないでください。
価格だけで購入先を選ぶべき資材ではありません。

花粉・花粉増量剤で起きやすい失敗

発芽率を確認せず増量剤を多く混ぜる

増量剤を増やすほど節約できるように見えますが、
有効花粉の濃度は低下します。
発芽率の低い花粉を高倍率で希釈すれば、
柱頭へ届く発芽可能花粉が不足する可能性があります。
花粉の状態に応じて混合倍率を決めます。

同じ作物ならどの品種の花粉でも使えると考える

自家不和合性や品種間の不和合性がある作物では、
花粉が付着しても受精しない組み合わせがあります。
花粉品種と栽培品種の和合性を確認します。

前年の残り花粉を状態確認せず使用する

見た目が変わっていなくても、
保存中に花粉の発芽能力が低下している場合があります。
長期保管品は保存履歴や発芽能力を確認してから使用します。

増量剤の撥水性と授粉適期を混同する

増量剤が吸湿しにくい、または撥水性を持つことと、
雨天でも正常な受粉・受精が成立することは別です。
授粉適期は作物、開花状態、気温、降雨などを含めて判断します。

花粉・花粉増量剤取り扱いメーカー・代理店

製造・発売元製品名・製品群用途分類特徴・注意点
株式会社アグリスPurePollen人工授粉用花粉キウイ、モモ、サクランボ、スモモなどの人工授粉用花粉。植物検疫を通過した花粉として販売。花粉は温度・湿度に敏感なため、保管・使用前処理はメーカー指定条件を確認する。
株式会社アグリス染色石松子花粉増量剤人工授粉用の粉末増量剤。100g入り。流動性を持つ石松子を利用し、花粉を均一に扱いやすくする。増量剤の撥水性と、作物の雨天時授粉適性は別に判断する。
株式会社アグリスポーレンアシスト人工授粉用溶液キウイなどの溶液授粉用。粉末増量剤とは使用方法が異なる。調製濃度・調製後の使用時間・温度条件などメーカー指定条件を確認する。
株式会社ミツワ染色石松子花粉増量剤ヒカゲノカズラの胞子を利用した粉末増量剤。ピンク色で授粉作業時の識別をしやすくした製品。80g入り。
株式会社ミツワすみ入り石松子花粉増量剤メーカーが「有機JAS用」として案内する石松子。80g入り。実際の有機JAS栽培での使用可否は、認証条件や認証機関への確認を優先する。
株式会社アグリキウイ花粉・ナシ粗花粉・ナシ純花粉・ニュー石松子人工授粉用花粉・花粉増量剤日本園芸農業協同組合連合会の現行掲載資料で取扱いを確認。「ニュー・ポーレン・ダスター」と併用する花粉・増量剤として案内されている。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。

関連する資材分類・農業用語

ここにアイテムを追加するには?