
軟白(なんぱく)とは、野菜の茎葉部分に日光を当てずに育てて白くする栽培技術
軟白(なんぱく)とは、野菜の茎や葉、時には芽などに日光が当たらないように工夫して栽培することで、葉緑素(ようりょくそ)の生成を抑え、白くやわらかな状態に育てる技術を指します。
具体的には、土を寄せる「土寄せ」や、紙・布・遮光シートなどによる「被覆(ひふく)」、暗室やむろに置く「遮光処理」などを活用し、光合成を抑制することで見た目・味・食感を改善します。
この技術は、特にネギ、ウド、セロリ、ズイキ(芋茎 ずいき)などの野菜類に多く用いられ、市場価値の高い白色野菜の生産に寄与しています。
同意語としては「白化栽培」「遮光栽培」などが挙げられます。
軟白の概要
軟白は主に「見た目の美しさ」「味のまろやかさ」「食感の柔らかさ」を向上させることを目的とした栽培技術であり、白色部分を商品価値の源泉とする作物に対して施されます。
野菜が光を受けることで生成される葉緑素を抑え、白いまま成長させることで、苦味やえぐみを軽減し、風味豊かな食材を得ることが可能になります。
また、高温期や生育後半期など、植物の成長が早まりやすい時期に合わせて、的確なタイミングで軟白処理を行うことが求められます。
軟白の詳細説明
- 対象作物と目的
軟白は、以下のような野菜に特に多く適用されます。
- ネギ(長ネギ・根深ネギ)
白い茎部分の長さを伸ばし、甘味を増す
- ネギ(長ネギ・根深ネギ)
-
- ウド
日陰または暗室で茎を伸ばして軟白化し、柔らかく芳香性のある風味に - セロリ
葉を包んで遮光し、苦味を減らして食べやすく
- ウド
-
- ズイキ(芋茎)
赤ズイキに遮光処理を施し、白ズイキに仕立てる
- ズイキ(芋茎)
- 軟白の方法
作物や地域によって異なりますが、主な方法は次の通りです。
- 土寄せ
ネギなどに対し、根元に土を重ねることで光を遮る - 被覆
紙、布、遮光シートなどを巻きつけて光を遮断 - 暗室栽培
むろ(保管用の小部屋)などで光を完全に遮る - 板囲い・遮光資材
囲いを設置して外光を防ぐ
- 土寄せ
- 軟白の生理的効果
光合成の抑制により葉緑素の生成が妨げられ、茎や葉が白くなるほか、苦味物質の生成も抑えられ、やわらかな食感と豊かな風味が形成されます。
軟白の役割・メリットと課題
軟白技術の利用には、以下のような役割やメリットがあります。
- 商品価値の向上
白く美しい外観と風味向上により、単価が高くなる - 食味改善
苦味や渋みの軽減による嗜好性の向上 - 柔らかさの確保
繊維が細かくなるため、調理しやすく、生食にも適す
軟白の課題と対策
- 遮光不完全による色むら
遮光資材の密着不足や隙間が原因で、部分的に緑化してしまうことがあります。
対策:遮光シートや紙をしっかり固定し、風でずれないように調整しましょう。 - 高温・多湿による腐敗
軟白中に湿度が高くなると、内部で蒸れや腐敗が発生する恐れがあります。
対策:通気性のある素材を選び、遮光中も換気や除湿を意識して管理しましょう。 - 手間とコストの増加
被覆や土寄せの作業は人手や時間を要し、経営負担となることもあります。
対策:農業資材(例:自動土寄せ機や専用遮光フィルム)の導入や作業効率の見直しを検討しましょう。