ミカンコミバエ(みかんこみばえ)

ミカンコミバエ(みかんこみばえ)
ミカンコミバエは、果実加害性の重要害虫

ミカンコミバエ(みかんこみばえ)とは、双翅目ミバエ科に属する重要害虫で、学名はBactrocera dorsalis(バクトロセラ・ドルサリス)、英語ではFruit fly(フルートフライ)と呼ばれます。

成虫が果実に産卵し、ふ化した幼虫が果肉を食害するため、商品価値を著しく低下させ、さらに流通や輸出における検疫上の大きな制約を生み出します。日本では沖縄や南西諸島で侵入と根絶を繰り返し、長崎県など本土でも警戒が続けられてきました。

対策としては、雄を狙ったMAT(エムエーティー)法、たんぱく質餌剤を利用するベイトスプレー、不妊虫放飼によるSIT(エスアイティー)などが組み合わされます。カンキツ、トマト、ナスなど幅広い果実類・果菜類に寄生するため、園地衛生の徹底と地域ぐるみの管理が不可欠です。 

同意語としては「オリエンタルフルーツフライ」「オリエンタルフルーツバエ」などがあります。

 

ミカンコミバエの概要

  • 分類・呼称
    双翅目ミバエ科/Bactrocera dorsalisFruit fly
  • 加害様式
    雌成虫が果皮を穿孔して産卵→幼虫が果肉を摂食→軟化・褐変・落果→流通停止や検疫問題に発展
  • 主な宿主
    カンキツ、トマト、ナス、ピーマンなどの果実・果菜。さらにぶどう、なし、いちじく、スイカといった果実も発生源になりやすいため注意が必要です。
  • 管理の基本
    誘引剤トラップで発生を監視し、雄個体に対するMAT(エムエーティー)(雄除去)と、状況に応じて不妊虫放飼SIT(エスアイティー)、園地衛生(残果・落果の即時処理)を組み合わせるIPM(アイピーエム)

ミカンコミバエの詳細説明

生活史は卵→幼虫→蛹→成虫の完全変態で、温暖条件下では世代交代が速く進みます。雌は成熟果に産卵し、幼虫期の食害で内部が崩れ、外観上は小孔やしみ程度でも、内部品質が大きく損なわれます。成熟幼虫は果実から脱出し土中で蛹化した後、羽化した成虫が再び交尾・産卵して増殖します。

検疫・流通面の影響では、発生確認地域からの出荷制限や処理義務、輸出検疫の強化が課され、産地の信用に直結します。したがって「収穫前スカウティング」による被害果の早期発見、選果工程での切断検査や異常果の排除、持ち込み果実の制限などの運用が重要です。

地域行政の取組みとして、テックス板(約4.5cm角の植物質繊維板に雄誘引剤と殺虫剤を含ませたもの)を設置する対策が実施されています。住民向け注意事項では、素手で触れないこと、触れた場合は速やかに石けん等で洗い流すことが示されています。

まん延防止に向けたお願い(重要):特に成熟期のぶどう・なし・いちじく・スイカ・トマト・ナスなどについて、採り残しや地面に落下した果実は決して放置せず、地中深くに埋設するかビニール袋で密封処分することが強く呼びかけられています。これは残果・落果が発生源になりやすいためです。また、初期防除が極めて重要であり、地域一体での取組みが求められています。

似た害虫としてウリミバエが存在します。

ミカンコミバエとウリミバエ

ミカンコミバエとウリミバエの比較

  1.  

ミカンコミバエの課題と対策

  1. 課題1:広い宿主範囲と高い増殖力
    多種類の果実・果菜を利用でき、温暖期には短いサイクルで世代交代します。発見が遅れると面的に拡大しやすいのが難点です。

    対策:誘引剤トラップの系統的巡回、捕獲データの記録と閾値管理、園地衛生(残果・落果ゼロ運動)。成熟期のぶどう・なし・いちじく・スイカ・トマト・ナス等では残果・落果の即日回収と埋設または密封廃棄を徹底します。

  2. 課題2:検疫・流通リスク
    発生が確認されると、地域産地の出荷や輸出に制約が生じます。

    対策:収穫前スカウティングの強化、選果でのカット検査、出荷ロットのトレーサビリティ確保。行政と生産者・JAの連携でテックス板配置や情報共有を迅速化します。

  3. 課題3:初期対応の遅れ
    初動が遅いと、面的な拡散により防除コストが急増し、住民・観光農園・直売所など広範な関係者に影響が及びます。

    対策初期防除が極めて重要という呼びかけに沿い、発見直後の一斉対策(テックス板の面的配置、残果・落果のゼロ化、持ち込み果実の管理)を地域横断で実施します。

現場での実務ポイント(チェックリスト)

  • モニタリング
    誘引剤トラップを設置し、週次で点検・記録。誘殺数の急増時は即座に関係機関へ連絡。
  • 園地衛生
    残果・落果は当天内に回収し、地中深く埋設またはビニール袋で密封処分。家庭菜園・観光農園・庭木も同様に徹底。
  • 安全管理
    テックス板は素手で触れない。やむを得ず触れた場合は石けんで速やかに洗浄。
  • 地域連携
    自治体・植物防疫所・JAの通知に従い、初動段階から一体で対策を行う(掲示・回覧・SNSでの注意喚起)。

参考

 

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