ジベレリン(じべれりん)とは、植物体内で生成される植物ホルモンの一群で、主に細胞伸長(しんちょう)や発芽、花成(かせい)などの生理現象を制御します。農業・園芸分野では、これらの作用を利用した植物成長調整剤として、果実肥大や種なし化、収穫調整などを目的に広く利用されています。
ジベレリンの概要
ジベレリンは、1926年に日本で最初に発見された植物ホルモンで、現在では100種類以上の関連物質(ジベレリン類)が確認されています。
中でも農業でよく利用されるのはジベレリン酸A3(GA3)であり、このGA3は主に植物の茎や果実の細胞伸長を促進し、形態形成や生育調整に関与します。
植物体内では、種子の発芽促進、休眠打破、花成の進行など多様な生理機能に関わっています。
ジベレリンは植物の自然な成長過程に密接に関与しており、その作用を利用した植物成長調整剤を適切に処理することで、農作物の品質や収量の向上が期待されます。
ジベレリン処理
ジベレリンとオーキシンの違いと併用時の注意点
ジベレリンとオーキシンはいずれも植物ホルモンですが、主な作用には明確な違いがあります。オーキシンは細胞の分裂や屈性反応、根の形成に深く関与するのに対し、ジベレリンは細胞伸長や発芽、果実肥大などを主に制御します。
実際の栽培現場では、両者を併用するケースもありますが、作用が相互に増強または過剰に働く場合があり、結果として徒長や奇形果の発生につながることがあります。
そのため、併用する際には目的を明確にし、処理濃度・時期・回数を慎重に設定することが重要です。
日本における農薬登録上の位置づけ
ジベレリンは植物ホルモンそのものではなく、農業用途では農薬取締法に基づき「植物成長調整剤」として登録された製剤が使用されます。
作物ごとに使用目的、希釈倍率、処理時期、使用回数などが厳密に定められており、登録内容を逸脱した使用は認められていません。
したがって、実際の使用にあたっては、ラベル表示や登録情報を必ず確認し、適正使用を徹底する必要があります。
ジベレリンの詳細説明(特にブドウ栽培に関して)
ジベレリンは果樹類・野菜類・花卉類など幅広い作物で利用されており、代表例としてブドウ(果樹類)、イチゴ(野菜類)、シクラメン(花卉類)などが挙げられます。特にブドウでは、以下の用途で利用されます。
- 種なし化(単為結果)
ジベレリン処理により受粉しなくても果実が肥大し、種なしブドウを生産できます。巨峰、シャインマスカットなどで一般的に使用される手法です。 - 果実肥大促進
果粒や房の肥大を促進し、商品価値の高いブドウを生産できます。適正使用により、農家の収益向上にも貢献します。 - 収穫時期調整
ジベレリン処理により果実の生育進行が調整され、結果として収穫時期を揃えやすくなります。労働力管理や市場への安定供給に役立ちます。
ブドウ以外の作物(イチゴ・カキ)での注意点
イチゴでは、ジベレリン処理により花芽分化や果実肥大を促進できますが、過剰使用すると徒長や花房の乱れが生じやすくなります。
カキでは、果実肥大や落果防止を目的に使用されることがありますが、処理時期を誤ると果形不良や成熟遅延を引き起こす可能性があります。
いずれの作物でも、品種特性や地域条件を踏まえた慎重な使用が不可欠です。
ジベレリンのメリットと課題
- メリット①(収量・品質向上)
適正使用により、果実のサイズアップや均一な品質の確保が可能になります。 - メリット②(作業の省力化)
収穫時期の調整により、農作業の効率化と省力化を実現できます。 - 課題(過剰使用時の生育異常)
使用量が過剰になると、果粒の過大肥大、奇形果、果房軸の異常伸長などが発生します。
課題と対策
- 課題①(過剰使用による生育異常)
過剰投与により品質低下や形状異常が生じる場合があります。
対策:メーカー推奨の濃度・回数を厳守し、事前試験で適量を確認します。 - 課題②(処理タイミングの難しさ)
処理時期を誤ると十分な効果が得られません。
対策:作物の発育段階と気象条件を把握し、指導機関の指針を参考にします。 - 課題③(コスト面の負担)
製剤価格が高く、経済的負担となる場合があります。
対策:目的を明確にし、費用対効果を考慮した使用計画を立てます。






