
リレー栽培(りれーさいばい)
リレー栽培(りれーさいばい)とは、作物の育苗・定植・収穫などの工程を、地理的・時期的・目的別に複数の圃場や経営体で分担し、連携的に生産を行う栽培方式です。
主に品質の向上、病害の軽減、出荷の安定化を目的としており、野菜・果樹・花卉類を中心に導入されています。
同意語としては、「段階栽培」「分業栽培」「時期分散型栽培」などが挙げられます。
リレー栽培の概要
リレー栽培には、以下のような複数の形態があります。
- 地理分業型
例:高冷地で夏季に育苗し、秋以降に平坦地で本生産。シクラメン・イチゴ・ランなどで見られる。 - 時期分散型
例:ホウレンソウを複数の圃場で播種時期をずらして栽培し、収穫の空白を防ぐ。 - 親株供給型
例:栃木県佐野市などで、親株を購入しランナーで苗を増殖し、再び産地へ返す。病害リスクを低減し、出荷時期に合った苗を育成できる。
リレー栽培の詳細説明
この手法の本質は、自然環境・作物特性・市場ニーズに応じた柔軟な圃場運用にあります。とくに以下の点が重要です。
- 気候適応
各栽培段階に最適な環境で作業を行うことで、病気の発生や品質劣化のリスクを低減。 - 周年供給
時期分散による計画的な収穫により、市場の需要に応じた出荷を可能にします。 - 苗供給連携
親株育苗型では苗の安定供給と病害リスクの低減が期待され、契約栽培や産地連携と親和性が高くなります。
リレー栽培の役割
- 栽培リスクの回避
異なる場所・時期での分業により、天候不順や病害の一括被害を防ぎます。 - 効率的な苗供給
特定地域(例:佐野市)で苗を大量かつ健全に育てることで、産地側の育苗負担を軽減できます。 - 流通と価格の安定
安定供給体制により、市場価格の急騰や暴落を抑えやすくなります。
リレー栽培の課題と対策
課題1:圃場間の物理的距離と輸送コスト
育苗地と定植地が離れている場合、輸送の手間とコストが増加しやすいです。
対策: 専用コンテナや温度管理可能な運搬手段を活用し、苗の品質劣化を防ぐ工夫が必要です。
課題2:生産者間の連携の複雑さ
複数の圃場・経営体が関与するため、スケジュールや栽培管理の共有が求められます。
対策: 契約ベースでの作業工程書や育苗マニュアルの標準化、ICTによる一元管理の導入が有効です。
課題3:病害の持ち込みリスク
親株や苗を移動する際に、病原菌や害虫を持ち込む可能性があります。
対策: 無病苗の検査体制を強化し、定期的な衛生管理(消毒・隔離)を徹底することが求められます。