炭酸ガス発生装置(光合成促進機)とは
炭酸ガス発生装置(光合成促進機)とは、施設園芸においてハウス内の二酸化炭素(CO₂)濃度を意図的に制御し、光合成速度の低下を防ぐための設備です。 特に冬季の施設栽培では、換気量の低下や早朝の呼吸消費により、日中であってもCO₂濃度が大気濃度(約400ppm)を下回る状態が発生しやすく、これが生育停滞や収量低下の要因となります。
炭酸ガス発生装置は、灯油・LPガスなどの燃焼方式、暖房機排ガスの再利用方式、ボンベ供給方式などがあり、「不足しているCO₂を補う」ことを目的とした設備です。 施用すれば必ず増収する装置ではなく、光・温度・根域条件が成立している場合にのみ効果が現れる点を前提に導入判断を行う必要があります。
炭酸ガス発生装置の基本概念
光合成と炭酸ガスの関係
植物の光合成は、光・温度・CO₂濃度のいずれかが不足すると、その要因が律速(ボトルネック)となり進行が制限されます。 CO₂は光合成の原料であり、十分な光量と適温条件が揃っている場合に限り、CO₂濃度の上昇が同化速度の向上につながります。
一方で、低日射・低温・高温障害・根傷み・葉面積不足などが存在する状態では、CO₂を施用しても光合成は増加しません。 このため、炭酸ガス施用は「万能な増収手段」ではなく、環境制御の一要素として位置付ける必要があります。
炭酸ガス発生装置の方式と仕組み
炭酸ガス発生装置には以下の方式があります。
- 燃焼方式(灯油・LPガス):燃焼によってCO₂を発生させる方式。発生量が多いが、燃焼管理・排気管理が必須。
- 暖房機排ガス再利用方式:暖房運転時の排ガスを浄化・制御して施用。暖房稼働条件に依存。
- ボンベ供給方式:高純度CO₂を供給。制御性は高いがランニングコストが大きい。
特に燃焼方式では、不完全燃焼・排ガス成分・湿度上昇などの副作用を考慮しない運転は、作物障害や安全事故につながるため、装置選定時に安全装置や管理体制の確認が不可欠です。
炭酸ガス施用の効果と限界
収量増加について
炭酸ガス施用によって、ピーマン・トマトなどで収量が増加した事例が報告されていますが、これは日射量・温度・施用時間帯・目標濃度・換気条件が適合した場合に限られます。
「約20%増収」といった数値は、特定条件下での結果であり、全作型・全圃場に当てはまるものではありません。 導入効果は、事前に無施用時のCO₂推移を測定し、律速要因を整理した上で評価する必要があります。
品質への影響
適正なCO₂施用は、光合成産物の供給量増加を通じて、果実肥大や糖度形成に寄与する場合があります。 ただし、病害抵抗性の向上や農薬削減効果を直接保証するものではありません。 生育が健全化した結果として副次的に管理が安定するケースがある、という位置付けが適切です。
製造元・発売元及び製品名
| 製造・発売元 | 製品名 | 特徴 |
|---|---|---|
| ファーマーズサポートネット | CO2局所施用(液化炭酸ガス施用装置) | 液化炭酸ガスを用いた光合成促進システム 熱が発生しないため、季節を問わず使用可能 多孔質チューブから生ガスを局所施用 ムラの無い細かな制御でコストを大幅節約 |
| 灯油を使用しないCO2施用システム | ||
| 炭酸ガス発生装置 LPガス燃焼方式 同社のグリーンラボと連動可能 | ||
| クリーンな炭酸ガスを自由に供給 オプションの炭酸ガスコントローラー(ZFP-9)で自由な濃度設定が可能 24時間タイマーで施用時間を設定が可能 LPCガス | ||
| 単棟ハウスの炭酸ガス施用に最適 安全燃焼システムと失火時ブザー警報により安心して使用が可能 | ||
| コンパクトラウンドデザインで設置場所を選ばない 簡単操作 オプションの24時間タイマー、濃度コントローラー有り 暖房機との連動運転も可能 JIS1号灯油 | ||
| コンパクトラウンドデザインで設置場所を選ばない 簡単操作 オプションの24時間タイマー、濃度コントローラー有り 暖房機との連動運転も可能 JIS1号灯油 | ||
| 小型軽量の本体 特殊設計により完全燃焼し、純良な炭酸ガスを供給 かんたん操作 別売の炭酸ガスコントローラで、濃度による運転も簡単にできる | ||
| 少燃費で効率よく炭酸ガスが発生 | ||
| 特殊設計により完全燃焼し、純良なCO2を供給 小型軽量の本体は、移動がラクで省スペース設置 JIS 1号灯油 | ||
| ガス炊き光合成促進機 コンパクトで低コスト | ||
フルタ光合成促進機 ZOゾウさん |
灯油またはLPガスを用いた炭酸ガス発生機 | |
| 灯油燃焼式でありながら、低温のCO2を局所施用が可能 低温CO2のため夏場を含めて周年利用可能 専用の細い子ダクトで群落に局所施用、無駄が少なく効率的 | ||
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| 導入しやすい低コスト・可搬型でコンパクト 灯油を用いたCO₂施用機 冬はCO₂施用機、夏は送風機として利用可能 | ||
光合成促進機 RA-439K(生産終了) |
ハウス内で不足しがちな炭酸ガスを効率的に供給 作物の光合成能力を高め、品質と収穫量アップ 頼れるハイパワーのコンパクトサイズ 使い慣れたファンヒータータイプだから安心 JIS 1号灯油 |
導入事例の読み方(注意点)
導入事例は参考になりますが、「作物名」「作型」「時期」「日射条件」「目標ppm」「施用時間」「換気運用」が一致しなければ再現性はありません。 事例は結果ではなく、条件の組み合わせとして読み取る必要があります。
導入時の注意点
濃度管理と環境制御
一般に、ハウス内のCO₂濃度目安は400~1200ppmとされます。 1500ppmを超える運用は、作物ストレスや費用対効果の悪化を招く可能性があり、安易な高濃度運転は推奨されません。
また、換気中の施用はCO₂の流出を招き、効果が出ない典型例です。 施用は時間帯・換気・温度制御と連動させて行う必要があります。
燃焼方式特有の注意点
燃焼方式では、以下の点を必ず確認します。
- 不完全燃焼によるCO・有害ガス発生リスク
- 排気が作物に直接当たらない配置
- 燃焼による水蒸気増加と湿度管理
- 安全装置・警報装置・定期点検体制
「CO₂を出しているつもりでも、作物に悪影響を与えている」ケースは現場で実際に発生しています。
初期投資と維持費の考え方
炭酸ガス発生装置は、設備費だけでなく、燃料費・保守費・センサー管理を含めた運用コストを前提に判断します。 効果が出る条件を満たさないまま導入すると、回収不能な投資になります。
まとめ
炭酸ガス発生装置は、施設園芸において光合成の律速を解消する補助的な環境制御設備です。 導入効果は条件依存であり、測定・管理・運転設計なしに効果を断定できる装置ではありません。
CO₂施用は「入れるかどうか」ではなく、「入れる意味がある環境かどうか」を見極めることが最も重要です。 その判断を誤らないことが、損失回避と安定経営につながります。
参考
生物系特定産業技術研究支援センター 《こぼれ話24》
《こぼれ話24》 炭酸ガス施用でハウス作物が増収







