ハウス暖房機(ハウス加温機)とは
ハウス暖房機(ハウス加温機)とは、
農業用温室やビニールハウスなどを加温し、
作物の栽培に必要な温度を維持するための設備です。
主に、A重油、灯油、LPガス、都市ガスなどを燃料とする温風暖房機、
電気を利用するヒートポンプ、
薪や木質バイオマスなどを熱源とする暖房設備があります。
温水を配管へ循環させて加温する方式や、
地中・根域を加温する方式もあり、
施設規模、作物、栽培方式、地域の気象条件によって適した方式は異なります。
暖房機の能力はハウスの坪数だけでは選定できません。
必要な暖房能力は、
施設の大きさだけでなく、
設定温度、最低外気温、
被覆資材や内張りの保温性能、
隙間からの空気流入などによって変わります。
暖房機は最大暖房負荷から選ぶ
例えば、同じ300坪のハウスでも、
単層被覆で隙間の多い施設と、
内張りカーテンを適切に施工した施設では、
必要な暖房能力が同じにはなりません。
さらに、夜温を5℃に保つ栽培と15℃に保つ栽培では、
外気温が同じでも必要な熱量が大きく異なります。
暖房機を選定するときは、
ハウスの被覆面積、保温性能、
設定室温、地域の設計外気温などから
最大暖房負荷を求め、
それを満たせる暖房能力を確保します。
メーカーが示す「標準暖房面積」は参考値です。
標準暖房面積だけで機種を決めないでください。
既設暖房機を更新する場合も、
現在の暖房機と同じ能力の機種へ機械的に交換するのではなく、
被覆構造や設定温度が変わっていないかを確認します。
燃油・ガス式温風暖房機
施設園芸で広く使用されているのが、
A重油、灯油、LPガスなどを燃焼させ、
熱交換器で暖めた空気をハウス内へ送る温風暖房機です。
燃焼排ガスは煙突などを通して屋外へ排出し、
暖めたハウス内空気を送風機で循環させます。
温風を施設全体へ分配する場合には、
温風ダクト・暖房用ダクトを使用します。
下吹き、上吹き、低床型などがあり、
ハウス構造や栽培方式に応じて選定します。
燃料種によって燃料単価だけでなく、
燃料タンクや配管、
バーナー構造、
保守方法なども変わります。
ヒートポンプによる暖房
ヒートポンプは、
外気、水、地中などから熱を取り込み、
電力を使ってハウス内へ熱を移動させる設備です。
燃焼式暖房機とは異なり、
機器自体で燃料を燃焼させずに加温できます。
空気熱源ヒートポンプでは、
低外気温時に能力や効率が低下したり、
室外機への着霜によって除霜運転が発生したりする場合があります。
このため、
ヒートポンプを主暖房として使用し、
厳寒時の不足分を燃油暖房機などで補う
ハイブリッド暖房も行われています。
ヒートポンプが経済的かどうかは、
電気料金、燃料価格、必要暖房能力、
年間運転時間などによって変わります。
「ヒートポンプ=必ず暖房費が安い」ではありません。
木質バイオマスなどを利用する暖房
薪、木質チップ、木質ペレットなどを燃料とする
バイオマス暖房設備も利用されています。
燃料を地域で安定して確保できる場合には、
化石燃料への依存を減らせる可能性があります。
一方で、
燃料の含水率、保管場所、
燃料投入、灰処理、
煙突、燃焼管理など、
燃油式暖房機とは異なる管理が必要です。
薪ストーブ型には送風機を持たない製品もあり、
ハウス内の温度分布を均一にするには
循環扇などを
別途使用する場合があります。
温風ダクトの配置で温度ムラが変わる
十分な暖房能力を持つ暖房機を設置していても、
ダクトの配置が不適切なら、
ハウス内に大きな温度ムラが発生します。
暖房機に近い場所だけ温度が高く、
妻面側やハウス中央部が低温になっている場合、
設定温度を上げるだけでは解決しません。
暖房運転中に、
作物の生育位置付近で複数箇所の温度を測定します。
温度差が大きい場合は、
ダクト径、本数、吹出口、
ダクト末端までの送風状態、
循環扇の配置などを確認します。
暖房能力不足と温風分配不良を混同しないこと。
温度センサーの位置
暖房機の温度制御では、
温度センサーの設置位置が運転結果を大きく左右します。
温風吹出口の近くへ設置すると、
作物周辺が十分に暖まる前に設定温度へ到達したと判断し、
暖房が停止する場合があります。
反対に、
局所的に低温になる場所へ設置すると、
必要以上に暖房運転が続くことがあります。
温度センサーは、
作物の生育位置や生長点付近を基準として、
温風が直接当たらない場所へ設置します。
複数の暖房設備を併用する場合は、
各設備が参照する温度にもずれがないか確認します。
環境制御を行う場合も同じです。
暖房機更新の前に熱損失を確認する
暖房費が増えた場合、
暖房機だけが原因とは限りません。
外張りや内張りの破損、
出入口や妻面の隙間、
カーテンの閉まり不良などがあると、
施設外へ逃げる熱量が増えます。
被覆資材や保温カーテンを適切に使用すると、
ハウスからの放熱を減らし、
必要な暖房能力や燃料消費量を抑えられる場合があります。
効果の大きさは、
被覆構造、資材、施設形状、施工状態によって変わります。
暖房機更新と保温対策は分けて評価しないでください。
暖房負荷そのものを減らした上で、
必要な暖房能力を再計算する方が合理的です。
暖房機の清掃・点検
燃油式暖房機では、
燃焼室や熱交換部へのすすの付着、
ストレーナーの汚れ、
燃料タンクへの水分やスラッジの混入などによって、
正常な燃焼が妨げられることがあります。
暖房期間へ入る前に、
メーカーの取扱説明書や点検基準に従って
清掃・点検を行います。
ノズル、バーナー、点火装置、
炎検出器、安全装置などは、
機種ごとに構造や整備方法が異なります。
精密な燃焼部品を自己判断で分解・加工・清掃しないでください。
異常燃焼、黒煙、異臭、
頻繁な失火、警報表示などがある場合は、
運転を継続せず、
メーカーや販売店、専門業者へ点検を依頼します。
点検周期も一律ではありません。
取扱説明書に記載された点検時期と、
実際の運転時間、燃料状態、使用環境を基準にします。
燃料消費量を減らす考え方
省エネルギー対策は、
高効率暖房機への交換だけではありません。
施設の保温性能、
ダクトによる温風分配、
温度センサー位置、
設定温度、
暖房機の清掃・燃焼状態などを総合して確認します。
作物や生育段階によっては、
時間帯ごとに設定温度を変更する変温管理も行われます。
必要以上に設定温度を下げればよいわけではありません。
低温による生育遅延、品質低下、
結露や相対湿度への影響も含めて判断します。
既設暖房設備の熱利用を改善する
暖房機省エネ・排熱回収機器もありますが、
すべての暖房機へ取り付けられるわけではありません。
ハウス暖房機(ハウス加温機)取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 特徴 |
|---|---|---|
| ネポン株式会社 | ハウスカオンキ HK30型シリーズ | 施設園芸用温風暖房機。A重油・LPG・都市ガス仕様があり、下吹き・上吹き・低床タイプを設定。通信機能を標準搭載し、ハウス規模や栽培方式に応じて機種を選択できる |
| 株式会社タケザワ | FOH-20Sシリーズ | A重油・灯油・ガスに対応する施設園芸用温風暖房機。下吹き、上吹き、上下吹きタイプを設定し、ポリダクトなど各種オプションに対応 |
| 三州産業株式会社 | L型ハウス暖房機 | 施設園芸用温風暖房機。下吹き・上吹き・低床タイプを設定。4段サーモなどの制御機能を備えたシリーズ |
| 三菱重工サーマルシステムズ株式会社 | 園芸暖房機 MHSシリーズ | A重油・灯油に対応する園芸用温風暖房機。チャンバー形、低床形、上吹形などを設定し、4段サーモを標準装備 |
| 石村工業株式会社 | ゴロン太 | 薪を燃料とする大型薪ストーブ。ビニールハウスなどの暖房用途に対応。送風機能を持たないため、施設条件によっては循環扇などとの併用が必要 |
| 石村工業株式会社 | スーパーゴロン太 | 薪を燃料とする大型暖房機。ゴロン太より燃料投入量と連続燃焼時間を拡大したタイプ。温度管理方法や送風設備を含めて導入を検討する |