補植とは
補植(ほしょく)とは、作物の栽培中に生じた欠株部分へ苗や幼植物を植え、必要な株数や栽植状態を補う作業です。
定植後に枯死した株や活着しなかった株を植え直す場合のほか、田植機の植付けミス、発芽・出芽不良、病害虫、鳥獣害、風雨などによって生じた欠株を補う場合にも行われます。
水稲では「差し苗」と呼ばれることもあり、田植え後に苗が植わっていない場所へ手作業で苗を植える作業が代表例です。
補植は、株数を増やすための密植作業ではありません。
本来作物が存在する予定だった場所に生じた欠株を補うことが目的です。
補植を行う主な場面
補植が必要になる原因は作物や栽培方法によって異なります。
- 定植後の枯死・活着不良:乾燥、過湿、低温、高温、根傷みなどによって苗が正常に活着しなかった場合。
- 植付け不良:田植機や定植機の欠株、苗の供給不良、植付け姿勢の不良などが生じた場合。
- 発芽・出芽不良:直播した作物で欠株が発生し、別途育苗した苗を欠株部へ植える場合。
- 病害虫・鳥獣害:生育初期の株が失われ、残存株だけでは適正な栽植状態を維持できない場合。
- 気象災害:強風、豪雨、低温、降雹などによって株が枯死・損傷した場合。
補植の必要性は、単純な欠株数だけでは判断できません。
作物の補償能力、欠株の位置や連続性、生育段階、補植後に残された栽培期間を考慮します。
補植の時期
一般に補植は、欠株を確認した後、できるだけ生育初期に行います。
補植が遅れるほど、既存株と補植株との間に草丈、根量、開花、着果、成熟などの生育差が生じやすくなります。
果菜類では収穫開始時期がずれ、水稲や畑作物では生育ステージや成熟期のばらつきにつながる場合があります。
補植する苗は、可能であれば本圃の株と同一品種で生育段階の近い予備苗を使用します。
ただし、補植を急ぐ前に欠株が発生した原因を確認する必要があります。
土壌病害、過湿、塩類集積、害虫などが原因の場合、原因を除かず同じ場所へ苗を植えても再び枯死することがあります。
補植後の管理
補植した苗は、周囲の既存株より根量が少なく、生育が遅れている場合があります。
植付け後は苗の状態や土壌・培地水分を確認し、必要に応じて適切な潅水を行います。
深植えや過度な鎮圧、根鉢の損傷は活着を遅らせる原因になります。
既存株との生育差を縮めようとして、補植株だけに過剰な施肥や潅水を行う方法は適切とは限りません。
根域や灌水系統を共有している栽培では、周囲の正常株まで過湿や肥料過多になるおそれがあります。
水稲における補植
水稲では、田植機の空打ち、苗の掻き取り不良、浮き苗などによって生じた欠株へ苗を植える作業を補植と呼びます。
ただし、欠株があるからといって、すべて補植する必要があるわけではありません。
水稲は周囲の株が分げつして空間を利用する補償能力を持つため、少数の欠株であれば収量への影響が小さい場合があります。
補植に必要な労力と、欠株による減収リスクを比較して判断します。
連続して広い欠株が生じている場合や、栽植密度が大きく不足している場合には補植の必要性が高くなります。
野菜・花きにおける補植
トマト、ナス、キュウリ、キャベツ、レタス、花きなどでは、定植後に枯死した株や生育回復が見込めない株を除去し、予備苗を植える場合があります。
特に長期栽培する果菜類では、欠株によって株間が大きく空くと、栽培ベッドや誘引設備、灌水設備を十分に利用できなくなることがあります。
一方、補植時期が遅すぎると周囲の株との生育差が大きくなり、補植株が十分な収量を上げられない場合があります。
「空いているから植える」のではなく、その後の栽培期間で補植効果が見込めるかを判断します。
補植・植え替え・追播きの違い
補植と似た作業には、植え替えや追播きがあります。
- 補植:欠株となった場所へ苗や幼植物を植えて株を補う作業。
- 植え替え:植物を別の株や苗へ交換する行為全般。欠株補充以外の目的でも使われる。
- 追播き:欠株部などへ種子を追加して播く作業。苗を植える補植とは作業内容が異なる。
- 間引き:過密になった株を取り除き、適正な株数や株間へ調整する作業。補植とは逆方向の作業。
特に直播栽培では、欠株部へ種子を播き直す作業を補植と呼ばないよう注意が必要です。
別途育てた苗を欠株部へ移植する場合が補植に当たります。
補植で起こりやすい失敗
欠株を見つけたら無条件に補植する。
作物によっては周囲の株が補償生育するため、補植による増収より作業負担の方が大きくなる場合があります。
補植が遅れても同じ収量が得られると考える。
生育ステージの差は完全には解消できません。特に開花・着果・成熟時期が重要な作物では管理や収穫が複雑になります。
枯死原因を確認せず同じ場所へ植える。
土壌病害、排水不良、灌水異常などが残っていれば、補植苗も同じ障害を受けます。
大きな苗ほど有利だと考える。
老化苗や根鉢の状態が悪い苗では、見た目が大きくても補植後の活着や初期生育が劣る場合があります。
英語表記
補植は英語では、農作業用語としてSupplementary plantingと表現できます。
欠株を埋めるという意味を明確にする場合には、gap fillingやgap filling with seedlingsなどの表現も使われます。
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