ベランダ用ビニールハウスの選び方|マンションでの設置可否・避難経路・強風対策を解説

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ベランダ用ビニールハウスの選び方|マンションでの設置可否・避難経路・強風対策を解説

マンションやアパートのベランダで、植物の冬越しや育苗に小型のビニールハウスを使いたいと考える方もいるでしょう。しかし、集合住宅のベランダは、自由に設備を設置できる庭とは条件が異なります。

ベランダは共用部分として扱われることが多く、避難経路、強風による飛散、排水、床への荷重、隣戸への影響などを確認しなければなりません。製品名に「ベランダ用」と書かれていても、そのマンションで安全に使用できることが保証されているわけではありません。

最初に確認すべきなのは製品のサイズや価格ではなく、管理規約上の設置可否と、避難経路を常時確保できるかどうかです。

対象読者

  • ベランダで鉢物の冬越しや育苗をしたい方
  • マンションやアパートに小型温室を置けるか確認したい方
  • 強風、転倒、飛散事故を避けたい方

設置前の主な課題

  • 管理規約や使用細則で設置が認められているか分からない
  • 隔て板や避難ハッチを塞がずに置けるか判断できない
  • 高層階や角部屋での強風対策が分からない
  • ハウス内の高温、低温、結露をどう管理すべきか分からない

この記事で分かること

  • マンションのベランダに設置できるか確認する方法
  • ベランダ向け製品を選ぶときの判断基準
  • 転倒や飛散を防ぐための設置・撤去方法
  • 育苗や冬越しで失敗しやすい温度管理上の注意点

先に結論

  • 管理規約で認められない場合は設置できません。
  • 隔て板、避難ハッチ、排水口、避難動線を塞ぐ製品は使用できません。
  • 市販の小型ビニール温室の多くは、強風時の屋外常設を前提としていません。
  • 強風が予想される場合は、風が弱いうちにカバーまたは本体を室内へ移動します。
  • 無加温の小型温室だけでは、凍結防止や一定温度の維持を保証できません。

ベランダ用ビニールハウスとは

一般に「ベランダ用ビニールハウス」と呼ばれているのは、鉢植えや育苗トレイを収納する棚型、ラック型、簡易温室型の製品です。ただし、「ベランダ用」という名称に、統一された耐風基準や公的な安全規格があるわけではありません。

購入時には、商品名だけで判断せず、取扱説明書やメーカーの表示から次の条件を確認してください。

  • 屋外で使用できる製品か
  • 常設できる製品か、季節使用を前提とした製品か
  • 強風時にカバーを外す必要があるか
  • 転倒防止方法が指定されているか
  • 棚板1枚当たりの許容荷重が明記されているか
  • 交換用カバーを入手できるか
  • 工具を使わず短時間でカバーを外せるか

庭用の小型温室との違い

庭や畑では、地面にペグを打ったり、基礎やアンカーを設けたりできる場合があります。一方、集合住宅のベランダでは、床や外壁、手すりなどの共用部分を居住者の判断で加工することはできません。

確認項目 マンションのベランダ 庭・畑
設置面 コンクリート、防水仕上げ、タイルなど。原則としてペグを打てません。 土の地面ではペグや基礎を利用できる場合があります。
固定方法 外壁、手すり、床への無断固定はできません。管理規約の確認が必要です。 土地所有者の判断で固定設備を設けられる場合があります。
避難経路 隔て板や避難ハッチまでの通路を常時確保する必要があります。 マンション特有の隔て板や避難ハッチは通常ありません。
建物形状による吹き下ろし、巻き込み、乱流、風の加速が生じる場合があります。 周囲の建物、地形、防風林などによって条件が異なります。
温度 方角、床材、壁面、上階の庇などによって高温・低温の双方が起こります。 地表面、土壌水分、周囲の植生などによって変化します。
周辺への影響 落下、飛散、排水、土の流出、騒音が隣戸や階下へ影響する可能性があります。 敷地内で影響を管理できる場合が比較的多くなります。

設置前に確認する6つの条件

ベランダ用ビニールハウス設置前の4つの確認ポイント

1.管理規約・使用細則・賃貸借契約を確認する

分譲マンションでは、バルコニーやベランダは、居住者が専用で使用していても共用部分として扱われるのが一般的です。
国土交通省のマンション標準管理規約では、共用部分は通常の用法に従って使用すること、バルコニー等には専用使用権が認められることが示されています。また、工作物の設置禁止や外観変更の禁止などは、各マンションの使用細則で定める考え方が示されています。

ただし、マンション標準管理規約は各マンションが規約を作成する際のモデルです。実際の設置可否は、住んでいる物件の管理規約、使用細則、管理組合の判断が優先されます。

賃貸マンションやアパートでは、次の資料も確認してください。

  • 賃貸借契約書
  • 入居者向け使用規則
  • 重要事項説明書
  • 管理会社や貸主からの注意事項

規約を読んでも判断できない場合は、製品の寸法、重量、設置予定位置が分かる資料を添えて、管理会社または管理組合へ確認します。

2.隔て板と避難ハッチを塞がない

隣戸との間にある隔て板や、床に設置された避難ハッチは、火災などの緊急時に使用される場合があります。

総務省消防庁の告示でも、避難経路となる隔て板の近くに、避難の支障となる物品を置かないことが示されています。

隔て板の前、避難ハッチの上、避難ハッチを開放するために必要な範囲には、ハウス本体だけでなく、鉢、ウェイト、ジョウロ、棚、資材も置かないでください。

普段は通れるように見えても、次の状態では避難の妨げになる可能性があります。

  • ハウスの扉を開くと通路を塞ぐ
  • 植物の枝葉が成長して通路へ張り出す
  • 鉢やウェイトを移動しなければ隔て板へ到達できない
  • 避難ハッチを開けたときにフレームや棚が干渉する
  • 避難時にビニールカバーへ足を取られる

3.床への荷重を確認する

小型ビニールハウス本体は軽くても、鉢、培養土、水、棚板、ウェイトを合わせると、総重量は大きくなります。

建築基準法施行令第85条には、建築物の構造計算に使用する積載荷重が定められています。ただし、この数値を「居住者がベランダに載せてもよい重量の上限」として、そのまま使用することはできません。

建物の構造、バルコニーの形状、経年状態、荷重が集中する位置などは物件ごとに異なります。大型鉢、土袋、貯水容器、コンクリートブロックなどを多数置く場合は、管理会社や管理組合へ確認してください。

重量を確認するときは、乾燥した土の重量ではなく、次の合計で考えます。

  • ハウス本体
  • カバー
  • 棚板
  • 鉢やプランター
  • 水を含んだ状態の培養土
  • 植物
  • 受け皿にたまった水
  • 転倒防止用ウェイト
  • ジョウロ、肥料、資材などの収納物

重い鉢やウェイトは一か所に集中させず、製品の棚板許容荷重も超えないようにします。重量が判断できない場合は、体重計などで実測する方法が確実です。

4.ベランダ特有の風を確認する

風の強さは、階数だけでは判断できません。角部屋、建物の隙間、吹き抜け、周辺建物との位置関係などによって、低層階でも強い吹き込みや巻き込みが発生する場合があります。

ビニールハウスは、重量が軽い一方でカバーの面積が大きく、風を受けやすい構造です。カバー内部へ風が入った場合だけでなく、ファスナーを閉じた状態でも、カバー全体が風を受けて転倒・移動する可能性があります。

購入前に、ベランダで次の状況が起きていないか確認してください。

  • 洗濯物が頻繁に強くあおられる
  • 軽い鉢やサンダルが移動する
  • 窓を開けたときに強い風が室内へ入る
  • 風向きによって手すり付近で大きな風切り音がする
  • 過去に物干し、鉢、日よけなどが転倒したことがある

このような場所では、背の高い製品やカバー面積の大きい製品は避けます。強風前に室内へ収納できない製品は、ベランダ用として適していません。

5.排水口と床面を塞がない

水やりで流れ出した培養土、落ち葉、肥料の粒などが排水口へ集まると、排水不良や近隣トラブルの原因になります。

設置場所を決めるときは、排水口と排水溝を目視でき、いつでも清掃できる状態にしてください。ハウスの脚、ウェイト、断熱材、すのこなどで排水経路を塞いではいけません。

水やりは一度に大量の水を流すのではなく、鉢底から流れ出る量を確認しながら行います。受け皿に水をため続けると、根腐れ、藻、コバエなどの原因になるため、必要がなければ水を捨てます。

6.室外機・火気・電気設備から離す

エアコン室外機の吸気口や吹き出し口をハウスで塞ぐと、室外機の性能低下や故障につながる可能性があります。また、室外機から出る風がハウス内の温度や植物の乾燥に影響することもあります。

ハウスと室外機の間隔は、エアコンメーカーが指定する設置・保守スペースを確保してください。

ビニールハウス内では、次の器具を使用しないでください。

  • 石油ストーブ
  • ガスヒーター
  • ろうそく
  • 炭や練炭
  • 屋内用の電気ヒーター
  • 防水・屋外対応が確認できない電気器具

育苗用ヒーターマットなどを使う場合は、屋外または使用環境に適合した製品か確認し、漏電遮断、コードの防水、コンセント位置、延長コードの定格を確認します。コードをサッシで挟んだり、接続部を床に置いたりしてはいけません。

ベランダ用ビニールハウスの選び方

ベランダ用ビニールハウス選定時の4つの確認ポイント

ベランダの奥行きだけでサイズを決めない

「奥行きが何cmなら、このサイズ」という一律の早見表では、安全な製品を選べません。同じ奥行きのベランダでも、隔て板、避難ハッチ、室外機、排水口、窓、物干し金物の位置が異なるからです。

設置前に、次の寸法を実測します。

測定する場所 確認する内容
ベランダ全体 幅、奥行き、高さを測ります。
避難動線 室内から隔て板または避難ハッチまで、物を動かさずに通れるか確認します。
避難ハッチ周辺 ふたを完全に開けられる範囲と、はしごを使用するための範囲を確認します。
扉の開閉 ハウスのカバーや扉を開けても、サッシ、網戸、通路に干渉しないか確認します。
排水口 ハウスを置いた後も目視、清掃できるか確認します。
室外機 吸気、排気、点検作業に必要な空間を確保します。
植物の成長後 枝葉が通路や手すりの外側へ張り出さないか確認します。

ベランダ向け製品の選定基準

確認項目 選定の考え方
高さ 背が高いほど風を受けやすく、重心も高くなります。必要以上に背の高い製品は避けます。
底面 幅が極端に狭く、高さだけがある製品は転倒しやすいため避けます。
カバー 強風前に短時間で取り外せる構造を選びます。
フレーム接合部 差し込むだけの接合部は、持ち上がったときに抜ける可能性があります。ロック構造や固定部品を確認します。
棚板 棚板1枚ごとの許容荷重が明記された製品を選びます。
撤去性 1人でも安全に持ち運べる寸法と重量を選びます。
交換部品 交換用カバー、ジョイント、棚板を購入できる製品が適しています。
取扱説明書 屋外使用条件、禁止事項、風対策が具体的に書かれている製品を優先します。

集合住宅の一般的なベランダでは、内部へ人が入るウォークイン型よりも、低く小さい棚型やラック型の方が、避難動線と撤去性を確保しやすくなります。ただし、棚型であっても規約上設置できるとは限りません。

フレーム素材だけで耐風性を判断しない

フレームには、スチール、アルミ、樹脂などが使われます。ただし、素材だけで転倒しにくさや耐風性を判断することはできません。

素材 特徴 注意点
スチール 比較的剛性を確保しやすく、製品数も多い素材です。 塗装や被覆が傷むとさびる場合があります。スチール製でも強風に耐えられるとは限りません。
アルミ 軽く、さびにくい製品が多くあります。 軽量な製品は移動・転倒しやすいため、強風前の撤去が必要です。
樹脂 軽量で組み立てやすい製品が多くあります。 紫外線や低温による劣化、接合部の緩みを定期的に確認します。

耐風性を左右するのは、素材だけでなく、高さ、底面の広さ、カバー面積、接合部、重心、鉢の配置、風向きなどです。

カバーの素材と交換時期

簡易温室のカバーには、塩化ビニル、ポリエチレン、EVA系素材、糸入りシートなどが使われています。

透明度、柔軟性、耐候性、保温性は、素材名だけでなく、厚さ、配合、紫外線対策、縫製、使用環境によって異なります。そのため、「PVCは必ず保温性が高い」「PEなら何年使える」と一律には判断できません。

次の変化が見られた場合は、交換を検討します。

  • 白く濁り、内部へ光が入りにくくなった
  • 硬くなり、折り曲げるとひび割れる
  • 縫い目やファスナー周辺が裂けている
  • 固定用のひもや面ファスナーが切れている
  • 小さな穴や裂け目が広がっている
  • カバーが縮み、フレームへ無理に引っ張らなければ装着できない

交換時期を「1~2年」と固定することはできません。日射、風、気温、保管方法によって大きく変わるため、使用前と強風後に状態を確認してください。

安全な設置手順

ベランダへの設置手順と強風対策

  1. 管理規約と設置可否を確認する
    製品を購入する前に、管理規約、使用細則、賃貸借契約を確認します。判断できない場合は、管理会社または管理組合へ問い合わせます。
  2. 設置場所を実測する
    隔て板、避難ハッチ、排水口、室外機、サッシ、物干し金物の位置を測ります。
  3. 室内または風のない場所で仮組みする
    部品数、フレームの向き、ジョイントの差し込み状態を確認します。高層階のベランダで部品を広げると、軽い部品が飛散する危険があります。
  4. 床を清掃する
    砂や小石が残っていると、脚部のがたつきや床面の傷につながります。
  5. フレームを設置して水平とがたつきを確認する
    脚が排水溝や段差に乗っていないか確認します。段ボールや木片を脚の下へ差し込む応急処置は、濡れやずれによって不安定になるため避けます。
  6. 棚板を固定する
    棚板の前後、上下を確認し、付属する固定部品をすべて使用します。
  7. カバーを取り付ける
    無理に引っ張らず、ファスナーや縫い目へ偏った力がかからないように装着します。
  8. 鉢を下段から配置する
    重い鉢、大きな鉢、背が高くなる植物は下段へ置きます。軽い育苗ポットを上段へ配置します。
  9. 避難・排水・開閉を再確認する
    ハウスの扉を開けた状態でも通路を確保できるか、避難ハッチと排水口を使用できるか確認します。
  10. 撤去方法を決めておく
    天候が悪化する前に、誰が、どの順番で、どこへ収納するか決めておきます。

ベランダでの転倒・飛散対策

ウェイトは補助対策であり、強風対策の保証ではない

メーカーがウェイトの使用を認めている場合は、専用品をフレーム下部へ確実に取り付けます。ただし、ウェイトを置けば強風時にも屋外へ残せるわけではありません。

ウェイトを使用するときは、次の点を確認します。

  • 棚板の上ではなく、できるだけ低い位置へ配置する
  • フレームと連結し、単に横へ置くだけにしない
  • 避難経路や排水口を塞がない
  • 転がる形状や倒れやすい容器を使用しない
  • 総重量と床への荷重を確認する
  • 水漏れ、袋の破損、容器の劣化を確認する

水入りペットボトル、土袋、コンクリートブロックなどを無条件に推奨することはできません。容器の転倒、袋の破損、荷重集中、避難の妨げなどが起こるためです。

手すりや室外機ラックへ勝手に固定しない

外壁、手すり、隔て板、床、雨樋、物干し金物、室外機、室外機配管、室外機ラックなどへ、居住者の判断でひも、金具、ビス、アンカーを取り付けてはいけません。

これらは共用部分である可能性があり、ビニールハウスから受ける風荷重を負担するための固定設備でもありません。防水層や外壁を傷つけると、漏水や修繕費用の問題につながる可能性があります。

何らかの固定を検討する場合は、管理規約を確認し、管理組合または管理会社から事前に書面で承認を得てください。承認のない固定方法は採用しないでください。

強風時にカバーを密閉して残さない

「風が入らないようにファスナーを完全に閉めれば安全」という判断は誤りです。カバーを閉めても、カバー全体が風を受ける大きな面になります。

反対に、一部を開放したままにすると、内部へ風が吹き込んでカバーが膨らむ場合があります。どちらが安全かは製品構造や風向きによって変わるため、開閉状態の調整だけで強風へ対応することはできません。

耐風条件が明示されていない製品は、強風が予想される前にカバーを外し、必要に応じてフレームも室内へ移動することが基本です。

撤去判断を風速15m/sまで待たない

気象庁の「風の強さと吹き方」では、平均風速10m/s以上15m/s未満でも、風に向かって歩きにくくなり、傘を差せない状態が示されています。

また、気象庁の風に関する説明によると、瞬間風速は平均風速の1.5倍から3倍程度に達することがあります。

したがって、「平均風速15m/sまでは屋外に残してよい」という基準は使用できません。天気予報の風速は観測地点や一定範囲を対象とした値であり、個別のベランダで発生する吹き下ろしや乱流まで正確に示すものではありません。

撤去は次のタイミングで行います。

  • メーカーが指定する使用条件を超える風が予想される前
  • 強風注意報や台風情報が発表される前
  • 洗濯物や鉢が強くあおられ始める前
  • 外出や就寝により状態を確認できなくなる前
  • 風が弱く、安全に作業できる時間帯

風が強まってからカバーを外そうとすると、カバーを持った人があおられたり、部品が飛散したりする危険があります。

育苗に使用する場合の温度管理

ベランダ用ビニールハウスの活用ポイント

小型ビニール温室は、外気温が低い日でも、日射を受けると内部温度が急上昇することがあります。外が涼しいからといって、カバーを閉めたままにしてはいけません。

温度計は苗の高さへ設置する

カバー上部の温度と、育苗トレイ付近の温度は同じではありません。温度計は、苗の葉や育苗トレイに近い高さへ置きます。

可能であれば、現在温度だけでなく、最高温度と最低温度を記録できる温度計を使用してください。発芽管理では、気温だけでなく培土温度が重要になるため、必要に応じて地温計も使用します。

20~25℃を一律の適温にしない

発芽適温、生育適温、夜温は作物や品種によって異なります。また、発芽前と発芽後でも適温が変わります。

温度管理は「一般的に20~25℃」という一律の数値ではなく、種袋、苗ラベル、品種資料などに記載された条件を基準にしてください。

晴天日は早めに換気する

換気は「昼になったら開ける」と時間だけで決めず、温度計の実測値と天候で判断します。朝の外気温が低くても、日射が当たり始めると短時間で温度が上がる場合があります。

次の状態は過熱の兆候です。

  • 葉がしおれる
  • 葉がカバー側へ巻く
  • 育苗トレイが急速に乾く
  • カバー内部が極端に高温になる
  • 植物体や培土から蒸れた臭いがする

晴天時に長時間外出する場合は、カバーを閉め切った状態にしないでください。自動換気設備がない簡易温室では、無人時の温度管理に限界があります。

過湿と病害にも注意する

保温を優先してカバーを閉め続けると、湿度が高まり、葉面が長時間濡れた状態になることがあります。これは、灰色かび病、べと病、苗立枯れなどの発生条件につながる場合があります。

水やりは夕方や夜間に大量に行うのではなく、培土の乾き、天候、植物の状態を確認して行います。葉を濡らしたまま夜間に密閉しないようにしてください。

冬越し・霜よけに使う場合の注意点

無加温温室だけで凍結を防げるとは限らない

簡易ビニール温室には、風を弱めたり、軽い霜から植物を保護したりする効果が期待できます。しかし、暖房のない小型温室では、夜間から早朝に内部温度が外気温へ近づくことがあります。

植物の耐寒温度を下回る最低気温が予想される場合は、ビニールカバーだけに頼らず、植物を室内へ移動してください。

特に、熱帯性の観葉植物、寒さに弱い多肉植物、発芽直後の苗は、薄いカバーだけでは保護できない場合があります。

床から離せば必ず暖かくなるわけではない

鉢を棚やすのこに載せることで、冷えた床との直接接触を避けられる場合があります。ただし、ベランダの温度条件は方角、床材、建物構造などによって異なるため、床から離すだけで凍結を防げるとは限りません。

断熱材を使用する場合は、次の点に注意します。

  • 排水口や排水溝を塞がない
  • 風で飛ばないようにする
  • 水を吸って劣化する材料を長期間放置しない
  • 避難時に滑ったり、つまずいたりしない配置にする
  • 植物の最低温度を温度計で確認する

毛布や不織布を外側へ掛けたまま放置しない

毛布、不織布、断熱シートなどを温室の外側へ掛けると、風を受ける面積が増えます。固定が不十分な資材は、飛散物になる危険があります。

使用する場合は、無風時の一時的な保温に限り、就寝前や外出前に飛散しない状態か確認します。強風が予想される場合は資材を外し、植物を室内へ移動してください。

植物の配置方法

植物名だけで上段・中段・下段を決めるのは適切ではありません。配置は、鉢の重量、植物の高さ、日照、通風、棚板の許容荷重で判断します。

配置場所 適したもの 注意点
上段 小型の育苗ポット、軽い育苗トレイ、小鉢 乾燥しやすく、日射を強く受けます。重い鉢や背の高い植物は置きません。
中段 小型の葉物野菜、ハーブ、育苗中の苗 上段の棚や葉で日陰にならないか確認します。
下段 重い鉢、大きな鉢、比較的背が高くなる植物 日照不足、過湿、床からの冷え、排水不良を確認します。

ミニトマトは棚型温室での長期栽培に向かない場合がある

ミニトマトは、品種によって草丈が高くなり、誘引、採光、通風のための空間が必要です。生育したミニトマトを棚の上段へ置くと、重心が高くなり、転倒リスクも増します。

棚型の簡易温室では、ミニトマトの発芽、育苗、低温時の一時保護に用途を限定し、生育後は十分な高さと通風を確保できる場所へ移動する方が安全です。

ミントも「下段向き」とは限らない

ミントは半日陰でも育つ種類がありますが、光が極端に不足すると軟弱徒長することがあります。下段が常に適しているとは限りません。

葉色、茎の伸び方、節間、培土の乾き、風通しを観察し、必要に応じて場所を変更してください。

よくある間違いと正しい判断

よくある間違い なぜ間違いなのか 正しい判断
「ベランダ用」と書かれているから設置できる 商品名は、管理規約上の設置許可や耐風性能を保証するものではありません。 管理規約、使用細則、製品の屋外使用条件を別々に確認します。
スチール製なら重いので風に強い 数kgの重量差よりも、高さ、カバー面積、重心、風向きの影響が大きい場合があります。 素材ではなく、製品全体の形状、撤去性、使用条件で判断します。
ファスナーを閉めれば風が入らない 密閉してもカバー全体が風を受け、転倒や移動が起こる可能性があります。 強風前にカバーを外し、必要なら本体も室内へ収納します。
ウェイトを置けば台風でも大丈夫 ウェイトは日常風への補助であり、強風時の安全を保証しません。 ウェイトに依存せず、早期撤去を基本とします。
手すりや室外機ラックは頑丈なので固定してよい 共用部分である可能性があり、温室の風荷重を負担するための設備ではありません。 居住者の判断では固定せず、管理会社または管理組合へ確認します。
日中は暖かいので夜も凍らない 無加温温室は、夜間に外気温へ近づく場合があります。 最低温度を測定し、植物の耐寒温度を下回る場合は室内へ移動します。
ベランダが広ければ大型温室を置ける 広さだけでなく、避難、排水、強風、外観、撤去性の制約があります。 実寸と避難動線を確認し、必要最小限の大きさを選びます。
温室内は暖かいので換気しなくてよい 晴天時は急激な高温と過湿が起こり、苗の障害や病害につながります。 苗の高さで温度を測り、実測値に基づいて換気します。

設置を見送るべきケース

次のいずれかに該当する場合は、ベランダへの設置を見送ってください。

  • 管理規約や使用細則で物品設置が禁止されている
  • 管理会社や管理組合から設置許可を得られない
  • 隔て板や避難ハッチまでの経路を確保できない
  • 排水口や室外機の点検スペースを塞いでしまう
  • 強風前にカバーまたは本体を撤去できない
  • 製品の屋外使用条件が確認できない
  • 手すりより外側へ植物やカバーが張り出す
  • 外出が多く、晴天時の換気や強風前の撤去ができない
  • 植物が必要とする最低温度を維持できない
  • 床への総重量を判断できない

設置条件を満たせない場合は、室内用育苗ラック、窓辺の育苗スペース、移動できる保温ケース、必要な時間だけ使用する育苗カバーなど、別の方法を検討します。

まとめ

ベランダ用ビニールハウスは、鉢物の一時的な防風、軽い霜よけ、春先の小規模な育苗などに利用できます。ただし、マンションや集合住宅のベランダは、居住者が自由に設備を設置できる場所とは限りません。

製品を購入する前に、管理規約、使用細則、賃貸借契約を確認し、隔て板、避難ハッチ、排水口、室外機までの動線を実測してください。

製品名に「ベランダ用」と表示されていても、強風時の安全性は保証されません。手すりや外壁へ無断で固定したり、カバーを閉じたまま強風に耐えさせたりする使い方は避けてください。

安全に使うための基本は、「重い製品を選ぶこと」ではなく、「避難経路を塞がず、温度を実測し、強風前に確実に撤去できる製品を選ぶこと」です。

設置条件を一つでも満たせない場合は、無理にビニールハウスを置かず、室内育苗や移動式の保温方法へ切り替える方が安全です。

参考資料

この記事の執筆・監修者
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