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 【生きもの異変 温暖化の足音】(24)実を結ばないサクランボ栽培

2008/06/24

 「せっかく色づいても、これじゃ出荷できない。ほら、これも。これもだよ」

 サクランボ「佐藤錦」の一大生産地として知られる山形県東根市。山形空港のほど近くで28年前から果樹栽培を続ける佐藤勝蔵さんが次々と摘み取るのは、2つの実がくっついたサクランボ。「双子果(ふたごか)」と呼ばれる変種だ。

 薄桃色に艶(つや)めく表皮も、口の中に広がる繊細な甘みも、高級品種と遜色(そんしょく)ないが、売り物にはならない。「見た目が悪いから」(佐藤さん)だ。

 生産者を悩ませるのは、双子果だけではない。果肉が過度に柔らかくなった「ウルミ果」や十分に赤みがつかない着色不良。いずれも高温が影響すると考えられている。

 その中でも佐藤さんが心配するのは、結実そのものの悪さだ。昨年収穫された佐藤錦は、一昨年の7割にも満たなかった。しかし、開花も例年通りで不作の予兆はなかったという。

 今年は平年より約1週間早い4月20日ごろから花が咲き始めた。

 「温暖化かなんか分からんが、ここ数年こういう不安定な状態が続いている。息子の代になったらどうなるのか…」。佐藤さんの不安はつきない。

                   ◇

 ウルミ果や着色不良は開花後の高温が影響する。

 これに対して双子果は収穫後の夏の高温が翌年、花に影響を及ぼすことで、本来は1本だけのめしべが2本となり、こうした形になるとされる。

 室温を35度に保った実験では3本めしべの花が確認された例もある。

 高級品種として売り出す佐藤錦にとってはいずれも致命傷だが、香川大学の別府賢治准教授は「実ができるだけまだいい。結実そのものに影響する可能性もある」と指摘する。

 つぼみから開花期の温度が20度を超えると、胚珠(はいしゅ)が影響を受けて花粉管が到達する前に退化。このため、「花は咲くが、実がならない」という事態が引き起こされるのだという。

 また、サクラがつぼみをつけるためには、冬場に7度以下で1400~1500時間という低温積算を必要とするが、香川県ではこれが年々減少。「このまま温暖化が進めば、生産帯自体が北上する」と別府准教授は警告する。

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 大手百貨店のお中元カタログ。そこに北海道仁木町産の佐藤錦が並ぶようになったのは約7年前からだ。

 新おたる農協によると、同町で本格的にサクランボの栽培が始まったのは約30年前にさかのぼる。

 温暖化で年々、収穫時期が早まった結果、現在は山形・東根産の佐藤錦が6月下旬に収穫ピークを迎えるのに対し、仁木町産はお中元シーズンの7月中旬がピークに。このため、出荷量は増え続け、昨年からは大手コンビニのお中元にも採用された。

 思わぬ温暖化の“効果”に地元がわく一方、「新たな病害虫が出てきたりするのでは…」(農協職員)と心配の声も聞かれる。

 一方、東根市で老舗苗木店を営む岡田貴之さんは一昨年、北海道の富良野市に約10ヘクタールの土地を購入し、佐藤錦など約30種のサクランボの栽培を始めた。温暖化による生産地の北上を見込んでの進出だ。

 「無謀といわれることもあるが、やってみなきゃ分かんないからね」と岡田さん。新たな挑戦も始まっている。(滝口亜希)

6月24日8時2分配信 産経新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080624-00000095-san-soci