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 濃密に香るシクラメン 世界初、野生種と交配 種の採取も成功

2007/12/20

 ■20年「試行錯誤の連続」

 世界で初めて、野生のシクラメンの香りを園芸種に取り入れた「芳香シクラメン」が誕生し、今冬から本格販売が始まった。埼玉県農林総合研究センター園芸研究所(久喜市)が20年間の研究の末、バイオテクノロジーの技術を活用して開発。バラとヒヤシンス、スズランを合わせたような香りを持ち、生産農家からも熱い注目を集めている。(石井豊)

 ≪花色の違う3種≫

 名付けて、「麗しの香り」「孤高の香り」「香りの舞い」の3種。花色の違いが特徴で、「麗し」はピンク▽「孤高」は明るい赤紫▽「舞い」はバイオレット。

 県内のシクラメン研究会の会員ら22生産者が同研究所から提供された約5000鉢の苗を育て、直売所などで販売している。

 園芸種のシクラメンは、香りがほとんどない。最近は品種改良が進んで香りがするものも登場したが、種を採っても親の香りが安定的に得られないという。

 それに反し、園芸種の元になったシクラメンと別系統の野生のシクラメンの中には香りはよいが見栄えが悪いものがあり、一部愛好家だけが楽しんでいた。

 「シクラメンは、園芸種と野生種の交配はできないとされていました。交配できれば香りのいいシクラメンができるという期待がありました」

 研究所花担当部長、石坂宏さん(52)は、研究を始めた昭和62年当時をこう振り返る。しかし、いくら交配しても種が採れない。受粉し、実がふくらんだかと思うと、それ以上成長しなかった。

 2年間、試行錯誤を続けた末、石坂さんは未熟な種から育てる「胚珠培養」という手法で成長させることに成功する。

 ただ、染色体数が奇数の41で「染色体のペアが作れず、種が採れない」ため、染色体倍加という方法で染色体を82に増やし、種の採取にも成功した。

 「先例もなく、倍加処理の時期や薬剤処理の仕方など試行錯誤の連続でした。試験管の中で初めて芽が出たとき、これで成功すると思いました。(苗になり)外に出し、花が咲いたらすぐにおいをかぎました」と石坂さん。

 ここまで9年。平成8年以降は採れた種で育て、香りも花もいい品種の選抜に取り組んだ。最初は香りがよくても、花が小さい。



 子から孫、孫からひ孫と数多くのシクラメンを育て、16年に完成したのが、花はシンプルだが園芸種と全然違った香りがし、自家受粉で形質が安定した種が採れる「麗しの香り」「孤高の香り」。18年には「香りの舞い」も誕生した。

 20年間を振り返り、石坂さんは「途中、ダメかと思ったこともありました。(芳香シクラメンを)売り場で見たとき、うれしかった。今後は多彩な色や形のシクラメンを作りたい」という。

 ≪「容姿は未完成」≫

 芳香シクラメンの人気は高く、シクラメン研究会会長で本多農園(埼玉県鷲宮町)代表、本多真治さん(41)によると、“ご指名”で買いに来る人もいるそうだ。

 「原種の血が濃いので栽培が難しいですが、従来のにおいのするシクラメンと全然違った香り。容姿は未完成ですが、対面販売で説明すれば売れます。品質向上を図り、官民で協力していけば埼玉の特産になる」と期待を寄せている。

 問い合わせは、埼玉県生産振興課(電)048・830・4381。

12月20日8時0分配信 産経新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071220-00000148-san-soci