トップページへ 農業関連記事 農業資材取扱店 更新内容 情報掲載 お問合せ
 
農業関連記事
←前の記事 記事一覧 次の記事→

 ニュースワイド2007:日豪EPA交渉入り合意 打撃、拓銀破たん以上/北海道

2007/01/14

 日本とオーストラリアは農産物の関税撤廃など自由貿易協定(FTA)を柱とした経済連携協定(EPA)の交渉入りについて昨年末、首脳間で合意した。交渉は今月中にもスタートし年内に締結する可能性が出ている。オーストラリアからの輸入上位品目である牛肉、乳製品、小麦、砂糖など4品目は道の主要農産物と競合しており、関税が撤廃された場合、農業だけでなく地域経済への影響は97年の北海道拓殖銀行破たんを上回るとの試算もある。【有田浩子、仲田力行】
 ◆牛肉など4品目競合--関税撤廃で小麦、てん菜全滅
 ◇影響は1兆円超
 「小麦、砂糖(てん菜)は全滅。乳製品、牛肉も深刻な打撃」。昨年11月末、道農政部は主要4品目の関税が撤廃された場合、影響額は1兆3716億円に上るとの試算をまとめ、公表した。

 撤廃されると、現在200~300%台の関税率の砂糖や小麦の生産額はゼロになり、製粉工場や乳業工場など関連製造業にも波及。約4万7000人が失業するという内容だ。道内GDP(総生産)で換算すると4・2ポイント下落し、97年の拓銀破たんのときの3・2ポイントを大きく上回る。これは、国が保護に必要な財源確保をしないという前提での試算であり、撤廃されるとしても5~10年かかるため、一気に壊滅的な打撃を受けるわけではない。しかし経営面積で日本の100~1000倍もあるオーストラリアと同じ条件で競えば、効率面で負けるのは確実。2国間の農産物の輸入拡大を突破口に、コメなどさらに他の品目にも波及する恐れもある。
 ◇危機感共有がカギ
 高橋はるみ知事は11日の記者会見で「単に国内の農業という産業を保護していくということではなく、日本人の食料安全保障を守っていく国民運動にしていかなければならない」と述べた。道や農業団体は、とかく「農業」「北海道」だけの問題にされることに危機感を持っており、農業団体と経済団体で作った北海道産業団体協議会(北産協)として政府に関税撤廃の例外措置を求める要請活動をしたり、北海道・東北知事会として要請活動を行ったりしている。また消費者の理解を得るため、今月31日には18団体で構成する「北海道農業・農村確立連絡会議」でシンポジウムを開催。知事やJA北海道中央会の宮田勇会長なども出席し、世論に訴えることにしている。
 ◆生産者「国内農産物は駆逐」
 「従来の自由化の波にない強烈なインパクトがある」。十勝管内上士幌町の菅原慎一さん(55)は、小麦やてん菜などの品目の関税撤廃が大きなテーマとなる日豪EPA交渉に危機感を募らせる。
 菅原さんは小麦やてん菜、ジャガイモなど5品目を35ヘクタールの農地で生産。全体の約45%の約16ヘクタールが小麦とてん菜の耕作地で、仮に交渉で関税が撤廃されると年間の粗収入が半減するという。
 菅原さんら生産者の手元には現在、小麦で60キロ当たり8000円台、てん菜は1トン当たりで1万6000円台の最低生産者価格の収入が入る。小麦の収入には原価の約3倍の調整金や国からの交付金が含まれる。調整金は主に関税収入が充てられるため、関税が撤廃されればこの調整金が大幅に減額され、収入が激減するのは必至だ。菅原さんは「関税で国内の農産物を保護する防波堤を崩してはいけない。オーストラリアを認めれば、次はアメリカやカナダからの作物も認める流れとなって国産品は駆逐される」と関税撤廃に強く反対する。
 菅原さんは自由化の波に耐え切れず離農した生産者が空けた農地を買い増やし、大型機械の導入などの設備投資でここまで拡大してきた。借金も早ければ残り10年で完済できるはずだったが、関税が撤廃されれば計画は大きく狂うことなる。「最低限食べるためには頑張ろうと思うが、いくら頑張っても安心した生活はできなくなる」と話す。
 北海道農民連盟の山田富士雄・副委員長によると、生産者のほとんどが菅原さんと同じような危機感を持つという。帯広市で昨年12月に開かれた交渉に反対する生産者団体の緊急集会には、全道から約1700人が集まった。
 山田副委員長は「食糧政策は農水省だけでなく国全体で考えるべきもの。安全保障の観点から食糧自給率を上げようと考えるなら、安易に日豪交渉を進めようとは言えないはずだ。鉄鉱石などの原料と食糧を同一視すべきではなく、日本のスタンスが問われる交渉になる」と話している。
 ◆消費者向けにリーフレット--「道農業・農村確立連絡会議」が作製
 日豪EPA交渉について、「北海道農業・農村確立連絡会議」は、消費者向けにリーフレット(A4判、両面)を作製した。
 「連絡会議」は、道や道内の農業・経済・消費者団体など18団体で構成。小麦、砂糖など北海道農業と競合する重要品目については関税撤廃の例外とするよう国などに求めている。
 リーフレットはQ&A形式。関税が撤廃された場合の道への影響などを解説。「安い海外の農畜産物が入ってくるんなら、いいんじゃないの?」という問いに対しては、「日本は今でさえ食糧自給率が40%で世界最大の食糧純輸入国。なにかの事情で輸入がストップした時に大変なことになる」としている。
 連絡会議では市町村や消費者団体などに配布し道民運動として関税撤廃反対の機運を高めていく。

1月14日12時1分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070114-00000108-mailo-hok