温暖化に強いコメ-。福岡県有数のコメどころ朝倉市で今年、品種改良した新しいブランド米「元気つくし」が、初めて作付けされた。 九州地方では、コシヒカリに負けないコメとして1989年からヒノヒカリが生産されてきた。しかし、温暖化の影響で品質が落ちたといわれ、産地は「北上」して中国、四国産ヒノヒカリの人気が上がっているという。 稲は光合成で作り出したデンプンを夜、もみに蓄えるが、夜間の気温が高いと稲が夏バテし、吸収しづらくなる。 「白米の中に変なもんが混じっているぞ」。朝倉市のコメ農家、手嶋元介さん(61)によると、白未熟粒と呼ばれるコメが混じり、地元産ヒノヒカリの品質が落ち始めたのは数年前だ。 コメの買い取り価格を決める等級は1等級から2等級に落ち、手嶋さんは「これ以上値段が下がれば米作りをやめる」と悲鳴を上げた。 元気つくしは、こうした事態に、県を挙げて生み出した新ブランドだ。県の農業総合試験場が高温に強い稲を開発し、1等級の水準に作り上げた。県内の消費需要を取り込むビジネスモデルで、まずは、3割強を占める他県産米のシェアを取り戻す考えだ。 ■ ■ 全国のコメどころでは、自力で価格を支えようと、ブランド米が相次ぎ登場し、戦国時代の様相を表している。 利根川に接する茨城県坂東市の農業生産法人「アグリ山崎」は、個人で高級ブランド米の販路を開拓している。代表の山崎正志さん(59)は「安全を売り物にしたい」といち早く有機米に取り組み、2000年には県内で初めて、JAS(日本農林規格法)有機米の認定を取得した。 「巨大ブランドに安住していては生き残れない」と、コシヒカリ一辺倒をやめ、地元で開発された「ミルキークィーン」も商品化した。もちもちした食感と、味の濃さが特徴だ。 化学肥料や農薬は極力使わず、除草も、多目的田植え機と手取りを組み合わせた手法を考え出した。生産だけでなく、デザイナーを起用したコメ袋を作るなど、売り方にもこだわる。 この結果、コシヒカリの有機栽培米「将門ひかり舞」は都内の百貨店で5キロ4200円、ミルキークィーンがベースの「美穂郷の米」は同3300円で販売される高級ブランド米になった。一般のコメの2倍以上の値段だ。 ■ ■ 「農協の購入価格では農家の手元に利益が残らない」。千葉県柏市の農業生産法人「柏みらい農場」代表の染谷茂さん(60)は、農協に委託しない独自の販路拡大に取り組んできた。 約100ヘクタールの水田で、有機肥料や減農薬のコシヒカリ、モチ米などを作ってきたが、今年から「みつひかり」の作付けを始めた。 みつひかりは、大手化学メーカーの三井化学が開発し、コシヒカリと同様の品質ながら比較的価格が安いことから、外食産業で人気がある。染谷さんは、販路の拡大に期待をかけた。 みつひかりには、水分を吸収しやすい性質がある。それが、卸業者を通じて大手牛丼チェーンの目にとまり、牛丼のつゆに良く合うということで、30数トンの全量買い取りが決まった。「コシヒカリと収穫時期がずれるため、生産効率も向上」し、染谷さんは「来年はさらに生産量を増やしたい」と意気込む。 国や農協に頼らずに自由にコメを作り、販売する自立型経営の取り組みは広がっている。ただ、首都圏の百貨店に高級ブランド米を納入し、成功を収めている山崎さんですら、「減反緩和で米価が下がれば、農家は想像以上の打撃を受ける」と気を引き締める。 ブランド米は、万能ではない。北海道では、高級志向で売り出しながら、販売量を求めてスーパーに卸したのをきっかけに安売りイメージが定着し、ブランドが崩壊した例もある。減反緩和に舵を切れば、コメの価格下落は避けられない。従来型の地域ブランドだけでは通用しないのはもちろん、農業生産法人や農家でも、企業経営と同じく、販売戦略が欠かせなくなる。産地のブランド米戦略は、時間との戦いだ。 ◇ フジサンケイビジネスアイで『食糧安保を問う(第3部)-コメを守る』として連載中。 10月8日15時16分配信 産経新聞 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091008-00000591-san-bus_all
産経ニュース「【日本の「食」を守れ】 ~食糧安保を問う~ 記事一覧」
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